「孤独が苦痛」な層は1割強にすぎない

私は、2020年に1都3県20~50代の未既婚男女(n15644)に対して、「孤独を苦痛と感じる」割合について調査したことがあります。それによれば、配偶関係別には以下の通りでした。

未婚男性 6.3%
未婚女性 1.9%
既婚男性 12.5%
既婚女性 12.1%

未婚男女においては「孤独が苦痛」なのは数%のレベルであり、既婚男女においても1割強にすぎないのです。つまり、未婚男女が4割近く孤独を感じるとはいっても、それを苦痛と思うのはその10分の1程度にすぎず、むしろ大多数は「孤独は感じているけれども、それは苦痛ではない」というのが正確な状況といえるでしょう。

もちろん、だからといって「すべての孤独は問題ではない」などと暴論を言うつもりはありません。が、一口に孤独といっても、それを苦に感じる人もいれば、むしろ孤独を楽しめる人もいるわけで、そうした人それぞれの置かれた環境や性格を無視して、ひとくくりに「孤独は悪だ」というほうが暴論なのではないでしょうか。

「コロナ禍でひとりぼっちの若者」問題の本質は

当然、孤独が苦痛である層に対しては、相応の対応が必要になるでしょう。例えば、コロナ禍において、新入学した大学生の中には、入学してからずっとキャンパスにも行けず、同級生と話をすることもできず、ひたすら自宅でオンラインの授業と課題をこなす毎日を強要されました。地方から出てきて一人暮らしをしている学生にとって、これはいわば「独房に押し込められたような状況」に近く、その環境において孤独を感じた若者も多いことでしょう。

加えて、大学生の主要バイト先である飲食店やサービス業の働き先も時短営業や休業でなくなりました。誰も知らない土地に来て、誰とも知り合えず、誰とも直接的に交流できない状況が1年以上も続けば、それは人間の持つ帰属欲求の完全排除に近いわけで、つらかったろうと思います。

しかし、これの問題は「若者が孤独を抱えている」という問題ではなく「若者の交流の機会をことごとく剥奪した政府および大学の処置のまずさ」であり、「若者の置かれた環境」の問題です。問題の本質を見誤ってはいけないと思います。

一方で、孤独・孤立対策室の今回の調査では、性別・年代や配偶関係以外にも多岐にわたる条件の調査を行っており、興味深い結果が出ているのでご紹介します。

20~50代の現役世代だけを抽出して世帯年収ごとに「孤独を感じる」割合推移を見てみましょう。