負けることに慣れているロシアが得意とした戦法
【小太郎】ロシアって、スゴい。負けたふりして、最後は勝っちゃった。
【つきじい】ロシアという国は、遊牧民との戦いでは、何度も何度も負けてきたのじゃ。
【小太郎】ええっ、そうだったんですか?!
【つきじい】日本はモンゴルを撃退したが、ロシアはモンゴルに負けて200年間も占領されている。
【小太郎】知らなかった……。
【つきじい】だから負けることには慣れている。じっと耐えて、反撃の時を待つ。
【小太郎】でも、自国の町や村を焼いちゃうって、むちゃくちゃです!
【つきじい】焦土作戦――敵に奪われる財産なら、破壊してしまえ、という考えじゃ。
【小太郎】家を焼かれたロシア人は、どう思ったのかなぁ?
【つきじい】ロシアでは、皇帝の専制政治が長く続いた。人々の声は政府に届かない。
【つきじい】フランスのような民主主義国家では、こんなことはできない。
一度、味わった自由の味は、なかなか忘れられない
【小太郎】ナポレオンは、どうなったんですか?
【つきじい】ロシア遠征の失敗を見たヨーロッパ諸国が、次々にロシア側に寝返ってフランスに攻め込んだ。
【小太郎】ええっ、ヤバいです!
【つきじい】ナポレオンは抵抗したが捕まって、島流しにされた。フランス革命はなかったことになり、革命で処刑されたルイ16世の弟が王になった。
【小太郎】フランス革命はムダだった、ってことですか?
【つきじい】いや、一度、自由を知ってしまった人間は、専制政治に我慢ができなくなる。フランスではその後2度の革命があり、再び自由を手に入れた。
【小太郎】なるほど。
敗れたフランスの革命思想がロシアに飛び火
【つきじい】それからフランス革命の思想がロシアに飛び火した。
【小太郎】えっ、どういう意味ですか?
【つきじい】フランスを占領したロシア軍の若い軍人たちが、フランス革命の思想――「自由」「平等」「人権」を知ってしまったのだ。彼らはロシアがいかに不自由で、不平等で、人権無視の政治であるか、目覚めてしまった。
【つきじい】だから、フランス革命をお手本にして、ロシアでも革命をやろうとした。皇帝に議会を認めさせ、身分制をなくそうとしたのじゃ。
【小太郎】おおっ! それで?
【つきじい】1日でつぶされた。メンバーは処刑され、あるいはシベリアに追放された。
【小太郎】……。
【つきじい】ヨーロッパの国々が議会を認めたあとも、ロシアだけは専制政治を続けた。議会を認めたのは80年後、ある国との戦争で負けたときじゃ。その国はアジアの国だが、すでに議会を開いていた。
【小太郎】どこですか?
【つきじい】日本じゃ。日露戦争に負けたことで、ロシアはようやく目覚めたのじゃ。