「年金倒産」を回避するには?
──「年金倒産」の危機にさらされているのは、中小企業ということでしょうか。
複数の中小企業によって構成されているのが「総合型」と呼ばれる厚年基金で、これが現在の厚年基金の大半を占めているのです。今回、AIJに運用を委託した企業年金のうち70超が厚生年金基金ということですが、そのほとんどが「総合型」基金です。
──この問題を根本的に解決するには、どうしたいいとお考えですか。
厚労省や民主党は、基金の資産運用のチェック強化などを検討するといっていますが、もはや小手先の対応ではどうにもならないところまで来ています。厚生年金基金制度そのものをやめるしか、根本的な解決に至る道はないものと思います。
しかし、すぐに制度を廃止するのが難しいということであれば、現実的な選択肢として、昨年出版した本(『年金倒産~企業を脅かす「もう一つの年金問題」』プレジデント社刊)でも触れていますが、「あるだけ解散」という方法が考えられます。
──「あるだけ解散」とは。
厚生年金の代行部分について、不足分の補てんなしに、今“あるだけ”の資産を国に返上すれば解散できるようにすることです。
さきほど述べたように、代行返上にあたっては、積立金が不足している場合は(ほとんどの基金が不足しているのですが)100%補てんした状態で返さなければならないわけですが、そもそも厚生年金本体が積み立て割合30~40%のレベルにしか達していないわけですから、今あるだけの積み立て分で返上しても、30~40%を超えていれば国が損をすることはまったくなく、むしろ積み立て割合は改善します。
──これで中小企業は救われますか。
少なくとも厚年基金が原因で起こる倒産、すなわち「年金倒産」は回避できるはずです。しかし、制度の維持を大前提としてきた今までの厚労省の対応を見ていると、この解決策をすんなりと選択するとは考えにくいのも事実です。
そうであれば、政治の力に期待するしかありません。厚生年金基金改革に本腰を入れてもらうために、世論を盛り上げていく必要があるでしょう。そのためにも、基金に加入されている皆さんに、厚生年金基金問題についてもっと知っていただきたいのです。