年を取るほど「個人差」が大きくなる

高齢者診療の基本は、個人に見合った診療をすることです。とくに70歳・80歳を過ぎた幸齢者の場合は、それが必要です。

年を取るほど、体の状態や身体機能は、個人差が大きくなるからです。たとえば同じ薬を飲んでも、効く人がいる一方で、だるさやふらつき、眠気などの症状が出てしまう人もいるのです。

高齢者診療の基本がわかっていない医師や、患者さんを観察していない医師にとっては、検査の数値が頼りです。薬を処方して正常値にすることが健康だと考えているわけです。このような治療が、体にダメージを与えることは明白です。

80歳の壁を超えていくには、いかによい医師を選び、よいつき合いができるか、が大きなカギを握ると言えます。

よい医師の見抜き方

どんな医師を選べばいいと思いますか?

最も簡単な見分け方は、薬について話をしてみることです。

老人の手と錠剤
写真=iStock.com/sakai000
※写真はイメージです

そもそも薬とは「体調をよくするためのもの」です。だから、もしも薬を飲んで具合が悪くなるなら、それは悪い薬なのです。量を減らしたほうが体調がよくなるなら、減らすのが正解なのです。

それなのに「これはよい薬だから」とか「薬をやめて死にたくないでしょ」などと取り合ってくれないようなら、その病院はやめたほうがいいと思います。

一方、患者の側も、医師に言われるまま薬を飲んだり、勝手に減らしたりするのではなく、素直に話をすることが大切です。

「この薬を飲むと体がだるくなる」とか「頭がぼんやりする」などと相談する。

まともな医師なら、「そうですか。薬が合わなかったのかもしれませんね」とか、「ほかの薬を試してみましょう」「お薬を減らしてみましょう」と対応してくれるはずです。そうした医師なら「よいかかりつけ医」になると思います。