私は10年前に日本取締役協会を設立し、「欧米型のコーポレート・ガバナンスを取れ入れるべきだ」と提言してきた。それは株主重視経営によるチェックシステムだ。投資家、とりわけ大きな影響力のある機関投資家の期待に沿える経営かどうかを、取締役がしっかり監督・監視していくというものである。

ところが、日本の機関投資家は、経営監視のプレッシャーを全然かけない。むしろ、一定数の株式を所有することによって安定株主となって、会社を守る側に立ってしまう。株主は、よりよい配当・リターンを受け取るのが本義だ。このような日本の従来の上場会社と機関投資家の関係では、株式市場は活性化せず、国際社会から後れを取ってしまう。

今後重要なのは、独立性を有する社外取締役の設置である。

例えば委員会設置会社であるオリックスでは、取締役は13人、そのうち6人が社外取締役だ。そして、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の委員は彼らだけで構成されている。これによって、会長である私自身の任命と給与は彼らに委ねられ、コーポレート・ガバナンスでは不可欠の経営の執行と監督の分離がなされていると考えている。

確かに欧米のやり方にも欠点はある。機関投資家の資金を運営しているのは、多くはファンドマネジャーであり、彼らは短期間でのリターンを求める。そのため、どうしても経営が短期志向になってしまう。半面、日本のよさは中長期的視点で企業の成長を考えられる点だが、それが業績不振の言い訳になってしまっては本末転倒だ。

今後、日本のみならずアジアなどの新興国も巻き込んだグローバル化は避けられない。コーポレート・ガバナンスはさらに重要性を増す。

制度はあくまで人が動かすもの。企業経営者をはじめ、コーポレート・ガバナンスに関わるすべての人が、改めて襟を正し、自らが不断の努力を続けていかなければならない。

※すべて雑誌掲載当時

(岡村繁雄=構成 若杉憲司=撮影)