①羊の数を数えると入眠時間が遅くなるという実験結果
あなたは眠りにつこうと必死になって、羊の数を数えたことがあるだろうか?
もしあるなら、残念だが文字通り時間を無駄にしていると言わざるを得ない。少なくとも、オックスフォードの以前の同僚の一人である、アリソン・ハーヴェイ教授(カリフォルニア大学バークレー校の心理学の教授)は、ずっと以前からこの迷信が誤りだと証明している。
ハーヴェイが、不眠症のあるグループに対して、うとうとしているときに、否定的な考えを抑えるのではなく、羊の数を数えさせたところ、入眠の時間は平均10分遅くなった。
それならば代わりに何を考えるべきなのだろうか。滝や、休暇中の穏やかでくつろいだ光景を目の前に思いうかべるようにすると、入眠の時間を約20分早めるのに役立ったという研究がある。
心地よい精神的イメージを維持するには認知的に多大な努力を要するので、不眠症に苦しんでいる参加者すべてが、否定的な考えや気がかりなことを思いめぐらさずに済んだのである(*1)。
②寝る2、3時間前は人工光を見ないほうがいい
あなたはスマホを横に置いて一緒に寝ているだろうか? それはやめたほうがいい。
北米の1000人を対象とした2015年の調査によると、私たちの71%がスマホと一緒に寝ている。3%はスマホを手に持って、13%はベッドの上か中に置いて、その他の55%はすぐ手に届くところに置いている(*2)。
私たちの多くが直面している、居眠りに関する問題に取り組む際に、環境の感覚的側面に一因があると考える必要がある。
最近、夜に人工光に晒されていることが非難の対象になっている。その人工光の多くは夜に画面を見ているときに生じている。
2015年の研究によると(*3)、就寝前の2、3時間、発光電子書籍リーダーで読書する人は、活字本に比べて、寝入るのに時間がかかるうえに、夜間に眠くなりにくく、メラトニンの分泌量も少ない。
また、体内時計が遅れたタイミングを示し、翌朝の目覚めも良くない。多くの人が、週に数回は就寝前の1時間以内に、何らかの電子機器を使っていることを考えると、この調査結果は特に重要だ。
実際、人々の間で、電子機器への過剰な依存に対する危険性の自覚が高まってきている。このような状況で、評論家の中には、機器製造会社自身が、ブルーライトから皆を守るために何か対策を講じる責任があるのか、疑問を投げかける者もいる──ブルーライトは私たちの脳をだまして、起きる時間だと思い込ませることがあるので特に危険だ。