侵攻は「正気の沙汰と思えない」米退役軍人も参加表明
アメリカからも、退役軍人を中心に数千人が志願している。元海兵隊員のバーガート氏は米ワシントン・ポスト紙に対し、ウクライナ侵攻への苛立ちを吐露している。「個人的には、正当な理由がないように感じられます。」「とても正気の沙汰とは思えません。異常な者たちがこの世界で狂った行いができるようであってほしくないのです。」
氏はイラク戦争で精鋭偵察部隊に所属した経験を生かしたいと考え、ウクライナ支援者のリストに登録した。直接的な戦闘には加わらないが、軍事訓練を施したり人道支援物資を輸送したりするなど、後方支援をこなしたいという。
ただし、義勇兵の増加は事態を深刻化させる危険性もはらむ。今後ロシア側も義勇兵の投入に踏み切れば、犠牲者のさらなる増加は必至だ。ロシアのショイグ国防相は3月11日、親露派が実効支配するウクライナ東部地域での戦闘に関し、中東から1万6000人が参戦を志願していると述べた。
東部で2014年から続くドンバス紛争では過去にも、極右の思想をもった海外のボランティア兵士たちが両陣営としてウクライナに押し寄せ、衝突を激化させた。現時点では両陣営の義勇兵として新たに大量の極右主義者が押し寄せたという情報はないが、今後の展開が注視される。
日本など各国政府は難色
在日ウクライナ大使館は2月末、Twitter上の投稿を通じ、日本からの義勇兵を募集した。これを受け、約70人が参加意思を表明した。その後、日本政府が志願の撤回を要請する事態となり、大使館側はツイートを削除している。
日本からの戦闘への参加は、刑法93条に規定する「私戦予備及び陰謀罪」に問われる可能性がある。条文は「外国に対して私的に戦闘行為をする目的で、その予備又は陰謀をした者は、3月以上5年以下の禁錮に処する。ただし、自首した者は、その刑を免除する」と定めている。
同法が実際に適用された例は極めてめずらしいが、2014年にはイスラム国の戦闘員となる目的でシリアへの渡航を企てたとして、国内の30代学生など5名が書類送検された。
過去にはヨーロッパの複数の国でも、国民が実際に起訴されている。イギリスやカナダなどでも、母国と交戦状態にない国への軍事行動に加わることは違法とみなされる。
弱きに与したいとの意思を称える声がある一方、かえって戦闘が拡大する懸念もあることから、自国からの志願者に多くの国の政府が難色を示しているのが実情だ。