国際資本市場からの締め出しを防ぎたいロシア

以上の関係をおさえた上で、今後の展開を考えよう。まず、ロシアとしては国際資本市場から完全に締め出されることは防がなければならないはずだ。米ドルでの利払い実施は、国際資本市場との関係を何とかして維持しなければならないというロシアの意思表明と考えられる。ある意味では、米ドルでの決済によって、ロシアの弱さが露呈されたと言っても良い。ルーブルの信用力に不安のあるロシアにとって、外貨の確保は社会と経済の運営、さらには安全保障体制の強化に欠かせない。

また、ロシアの若者はマクドナルド、スターバックスやイケアなど欧米のブランドやSNSを用いたライフスタイルに慣れ親しんでいる。欧米はロシアへの制裁を強化している。それによって、外資企業の撤退は増え、ロシアは世界からさらに孤立する。欲しいもの、さらには生活に必要なものが手に入らなくなることによって、プーチン大統領への批判や不満が増えるだろう。

デフォルトはもう目先に迫っている

その展開を防ぐために、ロシアは外貨建て国債の元利金支払いを履行し、西側との関係をつなぎ留める必要がある。それができなければ、ロシアは世界の投資家や企業、自国民などの信用を失う。目先、ロシアはあの手この手を使って外貨の確保に奔走しなければならない。そのためにノルドストリーム1の稼働継続はロシアにとって不可欠だ。

ただし、中央銀行が海外に持つ外貨準備資産が凍結された状況下でロシアの外貨資金繰りには限界がある。3月2日に米外国資産管理局(OFAC)は、ロシア中銀が輸出業者を代理人にして外貨の調達を試み、制裁逃れを企図したと発表した。ノルドストリーム1が稼働しているとはいえ、中銀制裁などの威力は絶大だ。

いずれロシアが保有する米ドル資金は途絶え、国債はデフォルトするだろう。その見方に基づき、欧米の主要な信用格付業者はロシア国債を格下げした。3月17日にはS&Pグローバル・レーティングが“CC(ダブル・シー)”への格下げを発表した。デフォルトに陥ったとみなされるD格まであと2段階だ。