ロシアが一線を越えることはない?
今後の注目点は、いつ、外貨建て国債がデフォルトするかだ。複数のシナリオが想定されるが、ここでは2つを比較したい。まず、デフォルトの発生以前に、ウクライナとロシアの間で停戦協定などが成立する展開だ。
その場合、西側諸国がロシア制裁を緩和する可能性はゼロではないだろう。部分的にロシアの金融機関の国際資金決済システムへの復帰が認められ、コストはかかるにしてもロシアは米ドル資金を調達することができるようになるかもしれない。ノルドストリーム1の遮断リスクも低下するだろう。3月中旬、ウクライナ危機に大きく影響される欧州株が上昇する場面があった。主要投資家は米ドルでの利払い準備をロシアが一線を越えることはないサインと解釈してリスクを取ったと考えられる。
世界経済を大混乱させる最悪のシナリオは
2つ目は、戦闘が激化しロシアとウクライナの交渉がまとまらない中でデフォルトが発生するケースだ。その場合、プーチン大統領はさらなる暴挙に打って出る恐れがある。ウクライナへの攻撃は一段と苛烈化するだろう。制裁への報復としてロシアがノルドストリーム1を本当に止める可能性も高まる。
それが現実となれば、欧州を中心にエネルギーの需給バランスは大きく崩れ、世界経済と金融市場は大きく混乱するだろう。2月24日以降のプーチン大統領の発言や、いまだにウクライナで激しい戦闘が続いていることを踏まえると、前者よりも後者の発生確率は高いと考えられる。
ロシアがデフォルト回避の意思を示し続けるか否かは、クレムリンの考えを読み解く重要な視座といえる。今後、ロシア政府関係者が米ドルやユーロ建て国債のデフォルトが近いと警告したり、制裁の報復措置としてノルドストリーム1を止めると述べたりするようなことがあれば、主要投資家はロシアの強硬姿勢が高まる展開に身構え、リスクを取ることができなくなるだろう。急速にリスクの削減を余儀なくされる投資家も増える。
それによって、世界の経済と金融市場は急速に不安定化する。世界経済のブロック化懸念も急上昇する。エネルギー資源などの価格は急騰し、今以上に世界各国の物価上昇と経済成長率の低下懸念は高まるだろう。ロシアが外貨建て国債のデフォルトを回避しようとし続けるか否かは今後の世界情勢に決定的な影響を与える。