いったんデフォルトは回避したが…

3月中旬、ロシア政府が米ドル建て国債の利払いを実施した。その背景には、自由資本主義陣営に属する米国やEU加盟各国と、ロシアが“首の皮一枚”の関係をなんとか保っていることが大きく影響している。特に、“ノルドストリーム1”が稼働し続けていることは大きいだろう。それが現時点でのロシアと西側諸国の関係をどうにかつなぎ留めている。ロシアは国際資本市場からの完全な締め出しを回避するために、ノルドストリーム1から得た外貨を用いて利払いを実施したと考えられる。

ロシアのプーチン大統領(=2022年3月23日、ロシア・モスクワ)
写真=AFP/時事通信フォト
ロシアのプーチン大統領(=2022年3月23日、ロシア・モスクワ)

その一方で、ドイツなどの欧州各国はパイプライン遮断リスクへの備えを強化しつつも、今すぐにロシアからの天然ガス供給が途絶える展開は避けなければならない。そのために米欧はロシア最大手のズベルバンクとガスプロムバンクをSWIFT除外の対象外とし、完全に米ドルなどの資金繰りが途絶えないようにした。

今後の展開として、いずれロシアの外貨は枯渇しデフォルト(債務の不履行)は避けられないだろう。重要なのは、そのタイミングだ。一つのシナリオとして、停戦協定がまとまらない状況下で外貨建て国債の元利金の支払いが実施できなければ、プーチン大統領がさらなる暴挙に打って出る恐れがある。そのリスクは軽視できない。制裁の厳しさが増す中、ロシアが外貨での債務返済を行う意思を持ち続けるか否かは、ウクライナ危機の今後の展開を考える重要な視座になるだろう。

「ルーブル払い」から一転したロシアの危機感

米欧が発動した中銀などへの金融制裁はロシアの金融システムと実体経済に大打撃を与えた。マクドナルドなどの外資企業が相次いで撤退したことも社会心理に無視できないマイナスの影響を与えただろう。クレムリン(ロシア大統領府)はその状況に危機感を強めているはずだ。

3月中旬に差し掛かると、外貨建て国債の利払いをルーブルで行うとしていたロシアの姿勢は変化した。シルアノフ財務相はルーブル決済の可能性を残しつつも、16日の利払いを米ドルで行う準備をしていると表明した。17日にロシア財務省は前日に期日を迎えたドル建て国債の利払いを実施し、一部の債権者は資金を受け取ったと報じられた。ロシア政府は必死になって米ドルをかき集めて利払いに対応したとみられる。