次に課税ターゲットとなる嗜好品とは?

では今後、どのような増税策が考えられるのでしょうか? 私は、ハームリダクションを口実に、生活習慣病の原因となりうる食品などに目をつけるのではないかと考えています。

その代表的な例が「砂糖税」です。2016年にWHO(世界保健機関)が、糖分を多く含む飲料に課税するよう加盟国・地域に呼びかけたことをきっかけに、各国で導入が進んでいます。

WHOは報告書の中で、加盟国政府から生活習慣病予防に関する方策についての相談が増えていることを挙げ、「政府が適切に税制や助成金制度を実施し、日常食の価格に介入することで、健康促進を図ることができる」と指摘。そして、世界的に肥満人口の割合が増加していることを課題として取り上げ、砂糖の摂取量を下げるために、各国政府は甘味飲料に「砂糖税」を課すなどして甘味飲料の価格を釣り上げ、人々の消費マインドを抑制すべきだと提言したのです。

2018年4月に砂糖税を導入した英国では、炭酸飲料などのソフトドリンクは値上がりしました。ドリンク100ミリリットル中に、5~8グラムの砂糖を含むものは1リットル当たり18ペンス(約27円)、8グラム以上のものは24ペンス(約36円)の値上がりとなっています。導入による税収は、半年後の10月末時点で1億5380万ポンド(223億100万円)に達し、英国政府が年度当初に見込んだ額を上回りました。

積み上げたコインの上に角砂糖
写真=iStock.com/5./15 WEST
※写真はイメージです

現在、砂糖税(砂糖入り飲料水に対する課税等)が何らかの形で導入されている国や地域は、英国をはじめ、アイルランド、ノルウェー、ボルトガル、ベルギー、デンマーク、フィンランド、アメリカ、南アフリカ、エストニア、フィリピンなど50以上におよんでいます。また、国によっては、ポテトチップス税(ハンガリー)、脂肪税(デンマーク、その後廃止)などの例もあります。

国はどれだけ税収が増えても満足しない

新型コロナウイルスによって国民の消費生活が一変し、苦しい思いの日々を送っている一方で、2020年度の税収は実は過去最高益の60兆8216億円を記録しています。これは消費税を10%へ引き上げたことによってもたらされた結果です。これだけの税収があっても、まだ「足りない」と国はこの度のたばこ税増税も実施するのです。

新型コロナウイルス対策費や、巨額の赤字を出した東京オリンピック・パラリンピックへの財政出動により、国の財政赤字は近年に類を見ないほど増加しています。財政を健全化するためには税収の増加が不可欠だ、とあらゆる場面で増税を繰り返すのです。この状況で政府が、次はどんな増税策を打ち出してくるのか、注視しなければなりません。

(構成=梅澤聡)
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