ロシアも経済制裁の悪循環に苦しめられている

また戦争が長期化し、ロシア国内での人心掌握が難しくなったプーチン大統領が停戦を申し出て、最終的に中立化のみを条件として、ウクライナからのロシア軍完全撤退を余儀なくされる可能性もある。

パレードでのロシア軍の隊列
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特にロシアは、クリミア併合時に莫大ばくだいな財政負担に苦しんだ経験があり、さらに広大なウクライナ全土を占領併合・復興するメリットはほぼゼロとみられている。ドンバス地方のみを併合した場合でも、ロシア政府の追加の想定予算は約200億ドルとされるため、中立化の国際条約さえ取れればウクライナへの経済的関与を極力減らしたい思惑もある。

ロシアは、じわじわと効いてくる制裁を少しでも早く解除したい思惑もある。特に問題は、制裁を強化すればするほど、ロシアが戦争終結を焦り、一般市民を巻き込んだ無差別砲撃を強め、国際社会の批判を招き、さらなる制裁が発動されるという悪循環に陥っていることである。ただ西側諸国はロシア軍がウクライナから完全撤退するまでは制裁解除しない厳しいスタンスをとるとみられている。

「第3次大戦勃発」という最悪のシナリオ

欧州で最悪のシナリオとして指摘されているのが、「⑤第3次世界大戦勃発」の可能性である。

特に西側諸国は継続して武器をウクライナに供与しているが、ウクライナのゼレンスキー大統領は、激化するロシア軍の攻撃を防ぐには不十分として、戦闘機の必要性を訴え、NATO諸国に援助を求めている。しかしロシアは、この要請に応え戦闘機を供与すれば、NATOがロシアとの直接的な紛争に踏み出したと解釈すると警告している。

ロシア国防相は、ウクライナの隣接諸国に対し、国内の空軍基地をウクライナ空軍に利用させることは、武力紛争への関与とみなすと発言し、第3次世界大戦も辞さないとした。

米国ではウクライナの軍事力強化のためにできる限りのことをすべきという、超党派の支持が集まっており、第2次大戦中に可決された連合国への軍事援助を行うための武器貸与法に似通った法制を検討する声もある。