停戦で訪れる「平穏」は一瞬かもしれない
ベラルーシからクリミア半島を縦断するランドブリッジをかけ、その東部と西部とでウクライナを分割し、東部をロシアに併合するという可能性も指摘されている。仮にそうなれば、これら二つの国で実物資産はもとより、外貨準備や国債などの国際金融資産・負債の分け合いが必要になり、それにはIMFが関与する可能性が高い。
②あるいは③のシナリオが現実となれば、プーチン大統領が望んでいたウクライナの西側傾斜の終焉を実現することになるかもしれない。それでも、ロシアが最終的に狙っているとされる親ロシア派政権の樹立は、現ウクライナ政権はもとより、市民の反対も強いことから、不安定な政権となる。紛争再発の可能性も高くなり、停戦は実現出来たとしても継続は難しいとみられている。
いずれにせよ、②あるいは③のシナリオが実現するかは、双方が停戦合意までにどれだけ戦果を挙げられるかに大きく依存する。
クリミアと東部は諦めて国土を守る選択肢も
ロシアはウクライナのNATO加盟や、ウクライナ国内へのNATO軍事インフラの配備は、ロシアの国家安全保障におけるレッドラインと表現してきた。一方のウクライナは、当初はNATOのみならずEUへの即時加盟を求めるなど、ロシアの支配に対し徹底抗戦の構えだったが、侵攻により市民に多大な犠牲が発生している今では、中立化に前向きな姿勢を見せるなど、主張にも変化が見えつつある。
また3月13日には、ロシア・ウクライナの双方のメディアから、水面下での停戦交渉に一定の進捗がみられたとの発表があった。ここで落としどころと予想される新たなシナリオは「④ウクライナ東部の独立承認・ロシア軍の段階的撤退」だ。
ウクライナが中立化およびクリミア併合承認・東部ドンバス地域の独立承認で譲歩する代わりに、現ゼレンスキー政権の維持、ロシア軍の段階的撤退、ロシアによる破壊されたインフラ復興支援などが条件となる。ロシアが西側の経済制裁の影響に屈するには数カ月から年単位の時間が必要となるため、ウクライナが戦争長期化で、国土を全て焦土に変えるよりはと、停戦を優先させるとの見方である。
特に西側の武器供与が継続し戦争が長期化していけば、ロシア軍の損失も大きくなるが、ウクライナの重要インフラは徹底的に破壊され、国家再建に非常な困難をもたらすうえ、人材の国外流出も続く。既にロシアの侵攻により、ウクライナの国土は破壊され、多くの国民が家を追われ、生活を破綻させられ、難民は300万人に達しつつある。