必要な時期によってお金を分けておく

人の一生にはさまざまな節目やステージがあります。例えば、学生時代、独身・新婚時代、子どもの成長期、家族の成熟期、リタイアメント期、老後などに分けられます。その節目やステージごとに、さまざまなお金のニーズがあります。

しかし、それを賄う収入は、それぞれのニーズが出てくる時期に合わせて、急に増やすことはできません。特に大きな資金が必要な「人生の三大支出」、住宅資金、教育資金、老後資金は、準備するのに長い時間がかかります。そのため必要なときに必要なだけ使えるように、一生のうちに稼ぐお金を、自分で工夫して分けておく必要が高まってきたのです。

そこで、わたしが強くお勧めするのがへそくりです。今あるお金を、今使うお金と将来使うお金に分け、将来使うお金は普段は見えないように隠し、その存在は無いものとしてやりくりして、いよいよ使うべき時が来たら、おもむろに取り出して用立てます。

大切なお金を、自分の目の前の欲望から完ぺきに守り抜き、本当に必要な時、必要なことのために使うところに、へそくりの本質的な価値があります。そう、へそくりは、時代遅れの節約術ではなく、未来の自分への仕送りなのです。

引き出しの中のへそくり
写真=iStock.com/Vyacheslav Dumchev
※写真はイメージです

私がお客様にしてきたアドバイスはきわめてシンプルです。それは、自分が持っているすべてのお金を、今使うお金と将来使うお金に分けておくこと。ただ、それだけです。

増やし上手がやっている「新へそくり三分法」

給与や売り上げが振り込まれる銀行口座から、「近いうちに使うお金」(生活費や税金)を「普通預金」に、「5年以内に使うお金」(教育資金やマイホームの頭金等)を「定期預金」に、「将来のためのお金」(老後に必要となるお金)を「積み立て投資用の投資信託」に、毎月1回自動で振り分けていくのです。そして、普段は、普通預金口座の残高だけ見て、他は見ないようにして暮らします。これをわたしは、「新へそくり三分法」と呼んでいます。

ファイナンシャルプランナー(FP)歴21年の中で、お金に困っていない人を観察すると、必ず自分のためにへそくりをつくってきた方々です。どれだけへそくりを仕込めるかで、その後の人生は大きく変わるといえるでしょう。

誰でも家賃や住宅ローン、クレジットカードの支払い、食費や子どもの教育費など、目先のお金のことはよく見えていますが、少し先のお金のことは、なかなかイメージできません。生命保険文化センターの調べでは、将来に向けてお金の見通しを立てている人は37%いるものの、20年以上先までの見通しを立てている人は、わずか9%でした。

しかし、へそくりびとは、今月使うお金だけでなく、将来使うお金の見通しも立てています。将来使うお金を、今へそくることで、貯めて増やしていきます。へそくりには、自分が目標とする未来と現状とのギャップを埋めるという役割があるのです。