実はゴリゴリのマッチョにはなれない自衛隊

「陸上自衛官になるとマッチョになれる」というわけでもありません。大体のますらおは、ボディビルダーではなくボクサーのような締まった体になります。持久走や武装障害走(※)など持久力を重視したトレーニングが多く、バーベルを持ち上げるような訓練は基本的にしないからです。任務では瞬発的なパワーより、粘り強さを求められるので、こういった訓練がメインになっています(ミニ四駆でたとえるなら、「ハイパーダッシュモーター」のような直線での速さではなく「トルクチューンモーター」のような坂道でも負けない粘り強さが必要といえるでしょう)。そういった理由から体力はつきますが、極度な筋肥大はしないので細マッチョぐらいに落ち着きます。

(※)武装障害走:ヘルメット、防弾チョッキ、ブーツ、小銃などのフル装備でアスレチックコースを走る訓練。心臓が破裂しそうになり、終わった後に嘔吐おうとすることも珍しくない。なお、色々な駐屯地が「ウチの武装障害走コースが一番キツい」と主張するので「日本一うまいラーメン屋」状態になっている。ちなみに幹部候補生学校の武装障害走コースは「世界で二番目、アジアで一番キツい」という。米軍に忖度そんたくして、あえて世界で二番目と主張をしているらしい。

補足しておくと、当然ながら強烈なマッチョを目指す人間もいます。彼らは有料のジムに通ったり、高いプロテインをガバガバ飲んだりする筋肉重課金勢です。そのため、駐屯地の売店に行くと、ヤマザキストアなのに外国のプロテインが売られているという尖った現象が発生します。

プロテイン
写真=iStock.com/JANIFEST
※写真はイメージです

いずれにしても「ますらお」には、いつでもどこでも腕立て伏せや駆け足をするぐらいの心構えが必要といえます。マッチョになる必要はありませんが、体力や根性はあればあるほどいいのですから。

課業終了後には「良い筋トレマシン」の争奪戦が起きる

ますらお達は、プライベートでもトレーニングを行います。もちろん個人差がありますが、プライベートでも鍛えれば鍛えるほどますらおといえるでしょう。

大抵の駐屯地には筋トレ場があり、好きなときに体を鍛えることができるので、筋トレ好きなますらおは課業終了後に早歩きで直行します。なぜ急ぐかというと、「良い筋トレマシン」は他の中隊の筋トレマニアに先を越されて使用されてしまうので、できる限り早く到着する必要があるからです。

放課後に小学生達が公園の人気遊具を争い、他校の小学生と熱いバトルを繰り広げるように、筋トレマニア達も我先にと向かうのです。この戦いに負けると、グラウンドの片隅に置いてある錆びたバーベルで体を鍛えるしかありません(そうしたアイテムは、公園の地中に埋まっているタイヤと同じぐらい人気がありません)。