※本稿は、ぱやぱやくん(著)・原田みどり(イラスト)『陸上自衛隊ますらお日記』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
定年退官するまでトレーニングは不可欠
さて、ここからは実際の「ますらお(※)育成訓練」の実態について見ていきましょう。正直キツそうだったり、想像がつかなかったりする部分もあるかもしれませんが、それを指導しているのも、しごかれているのも、皆さんと同じ人間です。一見すると遠い世界の出来事でも、中の人達に思いを馳せてみていただければと思います。
※ここでは「陸上自衛官=ますらお」とする。
皆さんも予想がついていると思いますが、自衛官はとにかく体力が必要です。どんなに知力が高くても、どんなに優しくても、体力がないあまり力尽きて倒れてしまえば役に立ちません。ですから、新隊員から定年退官するまでトレーニングは不可欠です。幹部候補生学校などでは、休み時間が10分でも一畳分のスペースさえあれば、せっせと腕立て伏せを始める学生も普通にいます。
一方で、実は入隊試験には体力テストがないので、入隊時には「箸よりも重いものを持ったことないです」という人でもまったく問題ありません。募集担当官から「体力はなくても大丈夫だよ」と言われることはよくありますが、それも事実なのです。ただ、これは「入隊時は必要ない」だけの話であり、入隊後はかなり求められます。つまり、もやしっ子でも入隊は可能ですが、入隊後には「強いもやし」になるように訓練をされていくのです。
なお、ガリガリのもやしだと思って舐めてかかった同期が、実はボクシングフライ級の国体選手や全国高校駅伝の選手だったという「SSRもやし」の隊員も一人ぐらいは存在します。人は見た目で判断してはいけませんよ。
ベテラン軍曹「これがマッスルスパイラルだ‼」
では、体力はどのくらいあればいいかといえば、「あればあるほどいい」としか言えません。ますらおは、厳しい訓練をこなしていくために、トレーニングそのものが仕事になります。年齢に関係なく、暇さえあれば腕立て伏せ、駆け足、懸垂をするなどの習慣が身についていきます。
私が在籍していた部隊のベテラン陸曹は、若手隊員を集めて懸垂をしながら「筋肉がつくと自信がつく。自信がつくと部下がついてくる。部下がついてくると部隊が強くなる。部隊が強いと国民が安心する。これがマッスルスパイラルだ‼」と言って、若者達に生き様を示していました。「マッスルスパイラル」、『キン肉マン』の技みたいで素晴らしいですね。