「空を見上げると雲があり、その上に冷たい空気が居座っていて、どす黒い雲から雷と雨が落ちてくる。また、雨が落ちるその先に日本地図を登場させて東日本から東北のあたりをペンで丸く囲んでいく」
自分の動作も頭の中に描きながら、こうするだけで新人も生き生きと原稿を読み始めます。説明が苦手という人や、焦ってしまって言葉が出てこないという人は、ぜひこのショートムービーを頭の中に作成して、言葉にする練習をしてみてください。
コメントを書き出して、「別人格」でチェックする
あまり気づいていませんが、私たちは意思の疎通がとても下手です。
「え、どういうこと?」と聞き返されることは日常茶飯事ですね。話している本人は、当然伝わっていると思っていても、相手には全く伝わっていないことがよくあります。
実はこの問題を解決するパーフェクトな方法はありません。私たちは多くの言葉を「つぎはぎ」しながら、言葉不足を補い、意思疎通を完成させるしかないのです。
ただし、人を傷つけたり、不快な思いをさせたりする言葉不足には注意が必要です。できれば発言する前に、何らかの対策をとっておきたいところです。
私の担当しているニュース番組の中に、10分ほどの「解説」コーナーがあります。そのコーナーは別のキャスターが進行を務め、私はコメンテーターの役割を担います。合計5、6回ほどの発言のタイミングがあるのですが、私はその中で「ここは発言に注意が必要だ」という場面を見つけて、チェックをしておきます。
またそこに、自分の発言予定のコメントを書き出してみて、「別人格」でチェックします。この「別人格で」というのが大切で、発したコメントが視聴者にどう届くのかを、事前に予測しておくのです。その時点で言葉足らずな部分があれば、補足します。
異なる考え方を持った人への配慮
例えば新型コロナウイルスのワクチンをテーマとして扱った日に、私の発言として「接種率をなるべく早く上げたいですね」と言ったとします。ワクチンに反対する人からすれば「このキャスター、何を言っているんだ」と、反発が生まれるでしょう。
もちろん私は普段から「ワクチンは強制ではありません、まずはご家族で話していただいて、打てるかどうか検討してみてください」と伝えていますが、全ての視聴者の方が私たちの放送をいつもご覧になっているわけではありません。そのことを念頭にコメントを作成しなければ誤解を生んでしまうのです。