例えば旅行に行った時のことを誰かに伝える時に、旅行先の風景やグルメを思い出しながら話しますよね。頭の中で思い起こすだけで少し興奮してきます。

「麺はラーメンより太くてさ、少し黄色いの。スープは透明でダシが効いててさあ、でもあっさりで全部飲み干しちゃう。紅しょうが入れてアクセントにするんだけど、テーブルに置いてあるコーレーグスっていう辛い調味料も入れると、まじうまい」

お分かりいただけたかどうかわかりませんが、これは沖縄そばの説明です。難しいテクニックは使っていません。沖縄に行って沖縄そばを食べた時のことを思い出して言葉にしただけです。

こんなにすらすら言葉が出てこないという人は、麺のこと、スープのこと、紅しょうがのことというようにブロックに分けて、文章を作ってみてください。それを暗記するのではなくショートムービーとともに「思い出しながら」言葉にするのです。

動きをつけて説明に奥行きをもたせる

さらに、ちょっとした工夫もお伝えしておきますと、ムービーですから「動き」があると説明が楽になります。例えば、テーブルに置いてあるスマートフォンの説明をしてみましょう。

単にテーブルの上に置かれているだけのスマートフォンでは言葉が出てきませんが、持ち上げたり、裏返したり、立てたりするショートムービーを頭の中に想像すると言葉が出てきます。

「テーブルに置いてあるスマートフォンを持ち上げてみると、意外に軽くて驚いた。手のひらに乗るくらいの大きさなんだけどね。裏返してみるとカメラのレンズが3つもついていて、これ何に使うんだろうって思うよね。実際に写真を撮ろうと思って、スマホをテーブルに立ててみたら本当に薄くて、テクノロジーってすごいね」

ここまですぐに言葉が出てこないと思いますが、大切なのは動きをつけることです。研修で後輩アナウンサー達にこの手法を伝えると、急に生き生きと言葉を紡いでくれるようになります。

ビジネスセミナーでのプレゼンテーション
写真=iStock.com/kasto80
※写真はイメージです

ただニュース原稿の場合は実体験が難しくなります。銀行強盗の実体験があったら大変ですからね。それでもなるべく原稿に近いショートムービーを作ってほしい、と伝えています。

例えば天気予報の原稿で「上空に居座る寒気の影響で、各地で雷を伴った激しい雨となっています。この天気は明日も続き、東日本から東北を中心に大気の状態が不安定となる予想です」という内容があったとします。ここでも、ショートムービーを作ります。