不動産業者は優良な物件探しの鍵を握ります。彼らとの付き合い方には、やはりそれ相応の作法とコツがあります。

1つ目は、レスポンスをしっかりすること。こちらが希望する物件の条件を伝えると業者はファクスなどで情報を送ってきます。一見して条件とかけはなれた案件ということもあります。ここで返答をしないで無視する人が多いのですが、これでは損をします。「◯◯の理由で難しい」「予算オーバーで……」「場所はもっと駅近を希望します」といったNGの理由を伝えると、業者の推薦する物件の「精度」もぐっと高まるはずです。業者にとって自分は、たくさんの客の中のひとり。「このお客さんは本気だ」と思える人に優先していい情報を教えたくなるものなのです。

とはいえ、リップサービスは禁物。これが2つ目のコツです。「いい物件があったらすぐに買いたい」では、思わぬ営業マンの電話攻撃にあうかもしれません。正しいのは「とくに急いで買うつもりはないけれど、1年くらいかけてじっくり探したい」くらいのゆとり感の演出。

3つ目は、自分の足を使うこと。端的に言うと、物件を現地確認するためでも、「業者の車に乗らない」ことです。理由は、親切にしてもらったので「今日中に決めないと悪いかな?」という空気になりがちだから。基本、必ず自分の足で歩いていく。そのほうが、近隣の街の雰囲気や店、住む人の顔などを見ることができます。不動産業者が提供するパンフなどには物件周辺の「イメージのいい」情報しか掲載されていないこともあるので注意しましょう。

では、いい業者はどうやって見分ければいいか。よく宅建業免許番号が古い(免許番号の数字が大きい)業者は長く営業しているから安心と聞きますが、あてになりません。正直、長年この業界にいる私にも、店構えなどを含め「外見」からは判断できません。

とはいえ、NG業者の基準は明確です。例えば、「早くしないとほかで決まるから……」と契約を急かす、物件のいい点ばかり言って悪い点は言わない、「こちらに任せて」と客に説明をしっかりしないなど。それが大手不動産業者であっても、避けたほうがいいでしょう。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=大塚常好 撮影=宇佐見利明)