「都心の職業に就いている人の方が序列が高い」という意識

14番目役を現代の日本で分かりやすくたとえるなら、出会い系イベントで男女の人数がそろうように待機している予備員である。

都市では、そのような需要が少ない特殊な仕事であっても、その人口の多さゆえに商売として成り立つ。たとえば、IT系のプログラマーやデザイナー、カメラマンやイラストレーター、ライターや翻訳家、タレントや司会者などの専門職が都市には存在している。就業先の選択肢も多く、フリーランスといった働き方も可能である。その特殊さゆえに時給単価も高くなり、刺激や自由度も高くなる。

都市に比べて過疎地域は、就業先の選択肢が少なく、その職種は単純労働の一般職がほとんどで、おのずと低賃金の長時間労働を余儀なくされる。こうした専門職と一般職の差は、都市の仕事は職業威信が高く、過疎地域の仕事は職業威信が低いといった序列意識をつくる。また、日本の行政組織が東京都に集中し、東京都の持つ威信が地方を序列化しているため、都心から遠く離れた過疎地域の序列意識はより低くなる傾向にある。

新潟の田園地帯の航空写真
写真=iStock.com/dreamnikon
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ローカル志向を持つ若い世代は増えているが…

そうした中で、ローカル志向を持つ若者が増えているとの指摘もある。たとえば、京都大学こころの未来研究センター教授の廣井良典(2015年)は、若い世代のローカル志向の高まりについて次のように述べている。

ここ数年、ゼミの学生など若い世代を見ていて、「地域再生」や「ローカル」なものへの関心が確実に強まっているのを感じてきた。たとえば静岡出身のある学生は、「自分の生まれ育った街を世界一住みやすい街にすること」をゼミの志望理由でのテーマにしていたし、新潟出身の別の学生は新潟の農業をもっと活性化させることを最大の関心事にしていた。別のある学生は「愛郷心」を卒論のテーマにし、それを軸にした地域コミュニティの再生を掘り下げていた。
(中略)こうした若い世代の「ローカル志向」は、必ずしも私自身のまわりの限られた現象にはとどまらないようだ。たとえばリクルート進学総研の調査では、2013年春に大学に進学した者のうち49%が大学進学にあたり「地元に残りたい」と考えて志望校を選んでおり、この数字は4年前に比べて10ポイントも増えている。また文部科学省の14年度調査では高校生の県外就職率は17.9%で、09年から4.0ポイント下落している。さらに内閣府が2007年に18~24歳の若者を対象に行った調査では、今住む地域に永住したいと答えた人は43.5%と、98年の調査から10ポイント近く増えたという(『人口減少時代の社会構想 地域からの離陸と着陸』)