自信がない部下は言葉で励まさない

大学院は平日夜間と休日に授業があり、仕事を早く切り上げたり、休暇を使ったりしながら何とか通い続ける。その間に、思いがけずお客さまサービス部の部長に昇進した。立場上、急なトラブル対応で予定を急遽変更したり、仕事と学業の悩みが重なったりとつらく感じることもあったが、日々試行錯誤しながら働いてきたことが部下のマネジメントに活かされていった。

「異動したばかりの部署ではコミュニケーションを取ることも大変でした。メンバーの大半は20代後半から30代の女性で子育てしている方もいるので、自分のキャリアを築いていくときに悩むことが多いと思います。私は一人ひとりに能力を発揮してもらいたいと願っているので、自分もなるべく仕事は遅くまでやらないとか、これなら自分もできそうだと思ってもらえるような無理のない働き方を心がけています。子育てなど経験のないことはわからない部分もあるけれど、わからないことこそ話を聞き理解できるように努めてきました。コンサルティング会社で管理職を離れ、さまざまな年代の人とフラットに話した日々もここに活きているのかなと思います」

もともと人間関係を築くのが苦手だったという大畑さん。自分に自信を持てないことにずいぶん悩んできたけれど、それが部下と向き合うときの強みになっているようだ。自信がなさそうに見える人は言葉で励ますよりも、まずはチャレンジできる業務をお願いして、できるだけ手を貸さずに見守っていく。それを乗り越えたときに、本当の自信が生まれることを確信しているからだ。

「私はずっと何か人より勝るものを持っていなければ、自信を持ってはいけないと思い込んでいました。でも、大学院で『ありのままの自分でいい』ということを学び、自分自身を信じてあげることが自信になるのだと気づかされた。昔はどうしても人と比べてしまうことが多かったけれど、今は自分の良いところも至らないところも受け入れられるようになってきたような気がしますね」

初めは雨や曇りが多くとも

今は、一緒に働くメンバーにもそれぞれ自信につながる場を提供したいと考えている。

ライフネット生命の社内では月一回、一対一で面談する機会(「来風面談」)があり、その冒頭で「天気」を聞くという。なぜ「天気」なのかと驚くが、自分の状態を「晴れ」「曇り」「雨」などと天気に例えて答えてもらうのだ。

大畑友香さん
写真提供=ライフネット生命

「先にまず天気でその人の状態がわかると、私も『どういうところが曇りなの?』と聞きやすくなり、入力するシートに書き入れて晴天率を計っています。初めは曇りや雨が多くても、だんだん話し方が晴れやかになり、生き生きした感じになっていく様子を見るのはとても嬉しいですね」

大畑さんもこれまでの人生では、仕事で悔しい思いをして泣いたり、力不足を感じて落ち込んだり、雨の日や曇りの日をたくさん過ごしてきた。そこで悩み尽くしても、また苦手なところへ飛び込んで乗り越えていく。それが確かな自信となって、今の自分があるのだろう。だから今は「いつも晴れています!」と、その笑顔も明るく晴れやかだ。

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