一昨年前に亡くなった野村克也監督と、日本ハムファイターズの新庄剛志監督には、知られざる師弟関係があった。『野村克也全語録』(プレジデント社)の解説を担当したライターの長谷川晶一さんが書く――。
野村克也さんをしのぶ会で、献花の際に祭壇に向かって花を投げる日本ハムの新庄剛志監督=2021年12月11日、神宮球場
写真=時事通信フォト
野村克也さんをしのぶ会で、献花の際に祭壇に向かって花を投げる日本ハムの新庄剛志監督=2021年12月11日、神宮球場

就任記者会見では「僕は優勝なんか一切目指しません」と宣言

野球ファンは1年に3度の正月を迎える。1度目は1月1日の元日。2度目は2月1日のキャンプイン。そして3度目が開幕戦当日である。

明日から、12球団一斉にキャンプイン。ここから、2022(令和4)年シーズンに向けての熾烈しれつな戦いが始まるのだ。

今年最大の注目を集めているのが「ビッグボス」こと、新庄剛志監督が就任した日本ハムだろう。昨年は5位と低迷しながらも、オフシーズンの話題を独占。スポーツ新聞の1面はもとより、ワイドショーでも大きく取り上げられた。

就任記者会見では「僕は優勝なんか一切目指しません」と宣言し、「試合中にインスタライブもやりたい」と発言した。何から何まで、従来の監督像を覆す会見だった。そう、彼はそもそも監督であることなど望んでおらず、自ら口にしたように「ビッグボス」であろうとしているのである。

生前の野村監督が新庄について語る際に常に口にしたこと

1999(平成11)年からの3年間、野村克也は阪神タイガースの監督を務め、新庄とともに縦縞のユニフォームに身を包んだ。

生前の野村は、新庄について語る際に「人を見て法を説け」と口にしている。

相手の性格や能力を見た上で適切な助言をする――。それが、新庄と接する上で心がけていたことだという。

目立ちたがり屋で、常に「カッコよくありたい」と望む新庄に対して、決して締めつけることはせずに自由奔放にやらせることで、彼の持つ能力を最大限に発揮させよう。そう考えたのである。

規律を重んじる野村にとって、ある意味では特別待遇を認めたのである。

野村は「まずは新庄にキャッチャーをやらせようと思った」と語っている。そこには「捕手目線で野球を学ばせたい」という狙いがあった。