それだけではなく、振り返りのための日誌や習慣形成のためのルーティンチェック表を毎日つけて、目標達成のための行動ができたかを確認しています。また、シナリオは1年や四半期など短期間で設定するものなので、何のためにその目標を立てるのかをロジックツリーとして構築することも大切です。つまり原田メソッドは、ロジックツリー、長期目的・目標設定用紙、OW64、日誌、ルーティンチェック表の5つのツールによって実践されるということを念頭に置いてください。

無形のものが大切になる

大谷選手は高校1年次、OW64の中心に「ドラフト1位、8球団指名」という目標を掲げました。そのために必要なこととして、コントロールや体づくりといった8要素を設定しているのですが、この8つの柱を「基礎思考」と言います。その中のひとつに「運」がありますが、今回はなぜ彼がここに運を入れたのかに注目してみたいと思います。

基礎思考の要素は「心(メンタル)・技(テクニカル)・体(フィジカル)・生活(ライフスキル)」からなります。この4つのうち、どれが欠けても長期的な目標を達成することはできないのですが、メソッドを理解していない人がOW64を作成すると、「技」に偏ったものができます。

原田メソッドにおける「運」とは、「長期的にプラスの結果を生み出す力」だと考えています。スキルや結果だけを追求した結果、一時的にうまくいっても体を壊したり、周囲から人が離れて失敗した例は枚挙にいとまがありません。長期的にプラスの結果を生み出すには、周囲の助力やメンタルといった、無形のものが大切になるということを大谷選手は理解していたといえます。

そんな大谷選手が、運を高めるために実践しているのが日誌です。ここでは「心・技・体・生活」について、成功・失敗したときの心の状態や、やり方などを毎日自己分析していました。これを行うことで、彼は成功したときの自分の思考や行動を把握し、意図的にうまくいった状態に自らを持っていき、成功の確率を上げていました。この「なぜ成功したのか?」「なぜ失敗したのか?」という視点がなければ、あらゆる行動が単なる出たとこ勝負になってしまい、まさしく運任せになってしまいます。行動を分析し、成功の確率を高めているからこそ、運が強いと思われているのです。

また、結果を出そうと思ったら「自分はできる」という自己効力感がないとパフォーマンスは上がりません。自己効力感が高い人を分析すると、結果予期と効力予期という2つの感覚を持っていることが多いのです。結果予期は目標を達成したときのイメージを明確に持つことで、効力予期は目標達成のために自分で行動を起こしていくことなのですが、この2つが働いていることを自己効力感、つまり自信と呼んでいます。