日本最大のポルシェマーケットである東京の近郊にPECを作るのは、合理的な判断だと言えるだろう。だが首都圏やその周辺で広大な用地がある場所は、他にも少なからずある。なぜ木更津の地を選んだのか。

「PEC東京はインバウンド需要も見込んでいますので、ロケーションは最重要ポイント。その決定にはかなりの時間をかけました。関東近郊を数多く回った中で木更津を選定したのは、広い土地が見つかったこと、地元の協力があったこと、加えて、アクアラインを通れば都心からも至近距離で羽田や成田といった国際空港からも直行できるなど、考えられるメリットが多かったからです」

コース設計でのこだわり

オープン記念セレモニーには木更津市の田中幸子副市長も出席し、PEC東京について「市の新たな魅力の発信拠点に」と期待を語った。

また、ポルシェジャパンがPEC東京沿いを走る木更津市道125号線の一部のネーミングライツを取得し、2026年9月30日までの5年間、約1kmの区間が『ポルシェ通り Porche Strasse(ポルシェストラッセ)』を名乗るなど、両者の良好な関係が伺える。

『ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京』敷地内
写真提供=ポルシェジャパン
ドライビングエクスペリエンスでは、ポルシェ初のEVカー『タイカン』も選択可能だ

「われわれはPEC東京の設置を受け入れてくださった木更津という場所を、ポルシェの重要なコミュニティと捉えており、地域貢献したいと考えています。PEC東京開設に当たっては、千葉県と『自然環境保全協定』を締結し、自然の保全、植生の回復、希少植物専用の湿性生物保全エリアを新たに設置するなど、環境への配慮を行っています。そして木更津市とは、地震、津波、風水害または大規模事故などの災害が発生した際、ポルシェジャパンが地域支援のための人的支援および車両・物資等の提供を通じて協力をする内容の協定を締結しました。また、地元の有機栽培米を通して子供たちに食や健康に対する意識向上を図る『木更津の学校給食提供に向けた有機米プロジェクト』や、ランニングイベント『木更津ブルーベリーRUN』などにも協力しています」

木更津の伊豆島地区に走行コースを作ったことで、PEC東京の側も他国のPECにない個性を得られることになった。

「伊豆島の元々の地形とそのままの自然をいかしたコース設計にした結果、世界中のPECの中で初めて、立体構造を備えたトラックとなりました。その結果、世界のサーキットの中でもコーナリングの難所、見どころとして名高い独ニュルブルクリンクのバンク付きヘアピンカーブ『カルーセル』や、米ラグナセカの15mの高低差を一気に駆け降りるシケイン『コークスクリュー』を再現できたんです」

『ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京』敷地内
写真提供=ポルシェジャパン
90分間のレッスンの料金は、最もリーズナブルな『マカン』で4万4000円。最高額の『911ターボ』は10万4500円という設定