装備は一流だが統合運用がほとんど進んでいない自衛隊

日米同盟の統合運用は、実は脆弱ぜいじゃくである。海洋同盟の色彩の濃い日米同盟は、大陸の陸上戦闘が主体となる米韓同盟やNATO軍のように指揮権が一元化されていない。それは実際の有事に及んで自衛隊と米軍の統合計画が日頃から練れていないということである。統合計画がなければ、そのための演習もない。

自衛隊の装備は一流ではあるが、何をどう統合的に運用するかというところが、そもそも自衛隊の中で詰まっていない。海兵隊に相当する旅団規模の水陸機動団も立ち上がったが、どのようにして戦場に投入するのか。有事に及んで、海上自衛隊、航空自衛隊と陸上自衛隊、水陸機動団がどう連携するのか。

銃を持った自衛隊
写真=iStock.com/Josiah S
※写真はイメージです

制度的にも、自衛隊の統合運用が始まったのはつい最近のことである。自衛隊統合幕僚監部(統幕)が立ち上がったのは2006年に過ぎない。小さく生んで大きく育てると言いながら、陸海空自衛隊の抵抗にあって、いまだに小さい体のままだ。

内局も統幕による自衛隊の掌握権が強くなることに内心怯えている。陸上自衛隊に至っては、かつての参謀総長に匹敵する陸上総隊司令官が設置されたのが何と2018年である。それまでは北方、東北、東部、中部、西部の方面総監が同格であり、5つのプチ陸上自衛隊が併存している有様であった。

リーダーシップを発揮できるのは総理と防衛大臣だけ

このような実態であるから、日本の自衛隊の中でさえ、どのようにして統合戦略を立てるのかという議論が、実は希薄なのである。

陸海空自衛隊に対して強力なリーダーシップを発揮できるのは、政治指導者だけである。自衛隊の指揮権を持つ総理大臣と防衛大臣だけである。自衛隊の育成と装備の充実には、長い時間と巨額の予算が要る。一朝一夕にできるものではない。安定した政権と強力な指導力が要るのである。

こういう話は最高指揮官の総理大臣が、強い問題意識を持って軍サイドを指導する必要がある。陸海空軍はどこの国でも仲が良くない。統率する最高指揮官が軍の統合運用に強い問題意識と責任感を持つ必要があるのである。