最悪の場合、日本に中国兵が上陸してくる可能性も

中国は、流行りのハイブリッド戦争を台湾に仕掛けてくるであろう。特殊兵による要人暗殺、海底ケーブルの切断と西側との情報遮断、その後にサイバー空間を通じた猛烈なフェイクニュースの洪水が来る。EMP(電磁パルス)攻撃やサイバー攻撃による政府・軍の指揮命令系統の破壊・乗っ取りが行われ、親中勢力を担いで傀儡かいらい政権が樹立され、中国政府に軍事支援の要請が出される。

中国軍は、海上封鎖をかけて外国勢力の介入を阻止した上で、傀儡政府からの内乱鎮圧要請を名目に上陸し、戦わずして台湾軍を屈服させようとするであろう。

しかし、そう上手くいく保証はない。台湾が反撃すれば本格的な中台戦争になる。現代戦の戦域は広い。台湾有事が始まれば圧倒的に数で優勢な人民解放軍が台湾島を封鎖し、海路、空路の連絡を遮断して、広大な戦闘区域を指定するであろう。現代の戦闘機は時速数千キロである。中国軍が日本の先島諸島の領空、領海を外して戦闘してくれると考えるのは軍事的に非合理である。先島諸島は中国の戦闘区域に含まれる可能性がある。

先島諸島の与那国、石垣、宮古の各島には陸上自衛隊が基地を開いている。中国が、米国と同盟している日本の自衛隊基地をあらかじめ無力化したいと考えることはあり得る。最悪の場合、中国兵が上陸してくることもあり得るであろう。

有事には機動装甲車が緊急展開することになっているが、今、どんどん廃棄している戦車を先島に持ってきておくべきではないだろうか。後に述べるが、先島住民の保護や避難についても真剣に考え、練習しておくことが必要である。

日米安保体制は韓国やフィリピンまで射程に入っている

また、日本は、日米安保条約第6条に基づいて、米軍が米軍基地を用いて日本周辺の地域を守ることを認めている。どういうことか。

岸信介総理が命の危険さえ覚悟して改定した日米安保体制は、日本の米軍基地を中核にして旧大日本帝国領だった韓国と台湾及び旧米国植民地だったフィリピンの安全を守ることを射程に入れたものである。

太平洋戦争終結時、大日本帝国は爆縮を起こし、周囲は力の真空となった。ソ連、中国、北朝鮮という巨大な共産圏軍事ブロックが立ち上がり、朝鮮半島では北朝鮮軍が無防備だった韓国に躍りかかり、米軍が応戦し、中国が参戦して朝鮮戦争の戦火が噴き出した。米国は、日本の後方支援基地としての戦略的価値を再確認していた。

日本にとっても日本列島の外殻ともいうべき韓国、台湾、フィリピンが防衛されることは、日本自身の安全保障にとって肝要であった。日米の戦略的利益が合致した。

韓台比と日本の関係は、中国人がよく比喩で用いる「唇と歯」の関係なのである。日本を拠点にして、米国が周辺の韓国、台湾、フィリピンを守る。それが日本の安全保障に貢献する。これが日米安保体制第6条の地域安全保障構想なのである。

したがって、台湾有事に米国が台湾支援に踏み切るとき、米軍は日本の米軍基地を使うことになる。中国がどう反応するかは分からない。

尖閣諸島の地図上に中国の船と日米の船
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