フリーマーケット市場の拡大に伴い、転売目的で商品を買い占める行為が横行している。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「転売目的の仕入れに特化した自動化ツールが存在する。月額3980円といった有料制で、こうしたツールが高額転売をエスカレートさせている。アメリカでは法規制の議論が進んでいるが、日本は対策が遅れている」という――。
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予約開始直後から定価の数十倍の商品が出回る

2021年は「転売」が話題になることが多かった。たとえば、SONYプレイステーション5(PS5)だ。抽選販売形式で手に入りづらいにも関わらず、予約開始直後から定価の数十倍にもなる転売が多発。その後も抽選販売形式は現在に至るまでに続き、CMは流れるにも関わらず抽選に落ち続けて手に入れられない人たちからは、転売ヤーたちへの恨みの声が多く聞かれた。

「抽選に落ち続けると落ち込む。ありとあらゆる抽選に落ち続けて、しかもそれが高額転売されているのを見ると、何で転売ヤーが手に入れられて自分はダメなのかと怒りがわく。抽選に申し込み続けるのがストレスで、高くてもいいかと転売品に手を出しそうになった」と、ある40代男性は言う。「何とか当選して買えてよかったが、本当にほしい人が手に入れられるようにしてほしい」

転売容認発言で退職処分になった例もある。ホビー雑誌「月刊ホビージャパン」は、Twitter上でプラモデルなどの買い占め、高額転売を容認する発言を行ったとして、該当の編集者を退職処分にしたと発表した。

盗難品を高額転売する、明らかな犯罪も

「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られているのが面白くないだけだよね」「頑張って買った人からマージン払って買うのって、普通なのでは」などの発言が問題視され、「プラモデルの販売をするホビージャパンが転売を容認するのか」と炎上状態になっていた。

同編集者が退職処分となっただけでなく、常務取締役、同誌編集長と副編集長がそれぞれ、取締役、副編集長、デスクに降格処分というきわめて厳しい処分となった。プラモデルを販売する雑誌であること、メーカーやユーザーにとって転売行為は迷惑行為であることを重くとらえたための厳しい処分と言えるだろう。

今年はその他、冬コミのサークルチケットや日本シリーズチケット、Appleのポリッシングクロスなども転売ヤーの餌食となった。電動自転車のバッテリーなど、盗難品が転売されて問題になっているものもある。2020年の新型コロナウイルス感染拡大初期には、使い捨てマスクや消毒液の需要が急激に高まり、定価を大きく上回る高値で転売されるケースが相次いだ。

このように本当にほしい人が手に入れられない一方で、ほしいわけでもない転売ヤーが手に入れて高額転売で儲けている事態が、呪詛を生んでいるのだ。