アメリカが規制強化を目指す「ボット」とは

転売が横行する背景には、ただ儲かるからだけでなく、転売行為がやりやすい環境が整ってきていることがある。限定品や目玉商品、トレンドの品など、入手困難なものは高額で転売できるとわかっていても手に入らないものだ。実は、最新の転売ヤーによる買い占めは、もはや人間の手によるものではなくなっている。

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写真=iStock.com/Tevarak
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「グリンチボット」というものをご存知だろうか。転売ヤーたちは、ボットと呼ばれるソフトウェアを使って人気の商品などを買い占め、転売を行っている。このような買い占めボットは、子ども向け絵本『いじわるグリンチのクリスマス』に登場する緑色の生物グリンチに由来して、グリンチボットと呼ばれるようになった。

アメリカで2016年に成立した法律「Better Online Ticket Sales Act of 2016(BOTS法)」は、チケットの大量購入・転売を禁止する法律であり、チケット以外には適用されない。そこで今年11月、BOTS法の適用対象をすべてのオンライン小売店に広げる内容となる「ストップ・グリンチ・ボット法(Stop Grinch Bots Act)」と呼ばれる法案が米民主党議員等によって提出された。

調査では、トイザらスで14.99ドルで売られていた人気おもちゃのフィンガーリングがAmazonとeBayで1000ドルで出品されるなどしていたという。2020年に起きたニンテンドーSwitchの品不足も、マスクや消毒薬不足も、少なくとも米国ではこのボットによる買い占めが影響していたと言われている。

日本でも確実な仕入れのため利用されている

さらにボットの開発者は、Discordなどのサーバー上にカスタマーサポートを構築、ユーザー支援を行っている。米国の転売ヤーたちはDiscord上に開設したサーバーを利用して在庫を確保。商品がいつどこで販売されるかという内部情報を共有したり、どこに在庫があるという情報が共有され、その直後に品切れになるという事態も起きている。

このように転売行為は海外でも問題視され、対策が始まっているが、転売行為が止められていないのが現状だ。なお、日本でもこのようなボットは複数確認できる。高額転売が可能な商品を探すサービスは月額3980円、12800円など有料で販売されているほか、自動購入ツールはライセンスキー代として2000円程度を支払うなどして利用できる。

このような自動購入ツールを使えば、Amazonや楽天市場などの上で、登録した商品を手動よりも圧倒的にスピーディに仕入れできるようになる。どのサイトでも使えるわけではないこと、サービスの料金のみでなく、自動購入ツールを24時間動かすために仮想サーバーを建てる必要があり、サーバー代といった運用費が別途かかるなどの注意点があるようだ。

同じボットを使う同業者も増えており、ほしいものが必ず仕入れできるわけではないが、それでも手動よりは確実に仕入れ、転売できることは間違いない。しかしこのようなものに対して、日本では規制なども特になく、それが転売ヤーの跋扈ばっこにつながっているのではないか。