クルマと自転車でいがみ合っても仕方ない

そもそも日本の車道はクルマが我が物顔で独占しすぎだろう。

だいたいドライバーが平気で「最近のチャリって邪魔だよね~」なんていう方が間違っている。自転車にとってはクルマの方が邪魔なのである。

ただし、そんなことを言い合っても仕方がない。いわばお互い様。これからはその車道というものを有効にシェアしましょうというのが、道路マネジメントの要諦なのだ。

子どもが走る車道左端に急停車する自動車
画像=筆者提供
子どもが走る車道左端に急停車する自動車

欧米諸国ではすでに多くの都市がそうなっていて、自転車レーンが敷かれ、あるいは自転車道が整い、中心街にクルマが入れない都市も多い。その結果、健康(医療費削減)、事故削減、エコ、渋滞解消など、多くの果実を得ているのだ。

2017年に施行された「自転車活用推進法」は、そういったことを踏まえ、自転車が歩道を走らないことを前提としている。それは当然といえば当然の話で「法律がどうの」という以上に、そうでなければ「自転車活用の果実」は得られないからだ。

クルマの代わりとなって初めて効果がある

たとえばエコ。自転車はたしかに「環境に優しい」とされる。だが、自転車自体が空気をきれいにするわけじゃない。自転車は空気清浄機でも何でもないんだから。

自転車は「それまではクルマが果たしていた役割」の一部(または全部)を代替することによって、本来クルマが吐き出していたはずのCO2、またはNOxなどの排気ガスを削減する。そのことがエコなのである。

自転車はクルマの代わりの役割を果たして、はじめてエコ。ここの部分、SDGsに関わる人たち、なかでも行政はよく認識していただきたいものだ。

また健康についてはどうか。これまた自転車が歩道を通っているようではキビシイ。これも構図は同じで「歩くよりも楽だから自転車」という距離しか走らないのでは、歩くより、かえって腹回りはメタボ化してしまう。この部分に関しても、これまでクルマで行っていた距離を自転車に置き換えるから、つまりクルマの座席に座っていたのを自転車にするから腹の脂肪が燃えるのだ。

安全もそう。たとえば「クルマ対歩行者」の事故が「自転車対歩行者」の事故になったら死亡事故になる確率は格段に下がる。クルマと自転車では運動エネルギーがまるっきり違うからだ。

すべてクルマのネガの裏返し。自転車の果実は、ある程度クルマの代替にならなくては得られない。つまり「自転車=歩道では得られない」のである。