日本が背負う「自転車事故多発国」という不名誉

そして、その日本こそが、先進各国の中で自転車事故比率が最悪レベルで高い国なのである。

自転車は歩道が安心で安全? まったく違う。まるで逆。自転車=歩道にしてしまったほぼ唯一の国、日本の自転車事故こそが、先進国の中ではトップクラスに多いのだ。

一見ドイツなども多いように見えるが、エコ意識の高いドイツ人たちは自転車に乗る距離が長く、頻繁なのである。それでいてこの数値。

日本と主な欧米諸国の状態別交通事故死者数の構成比率(2019年)
日本では「自転車乗用中」の交通事故死者が16%を占める(令和3年版交通安全白書より)

ところが、多くの日本人は、心の奥底でなんとなく「自転車は歩行者に毛の生えたモノだろ、だから、歩道だよ」と思っている。自転車側も「歩道の方が安心だ」「車道は恐い」と思っている。半世紀という時間はかくも重い。人々の意識も、そして残念なことにインフラも「自転車は歩道だろ~」ということでできてしまった。

日本の自転車事故率が非常に高いのはすでに述べたとおりだが、その温床として、プアなインフラがあるのは間違いない。だが自転車専用道? 自転車レーン? そうしたインフラを作るのに、今後また何十年待たねばならないのか。

とりあえず我々の目の前にある「非歩道」は車道なのである。では、安全に車道を走るにはどうすればいいか。

自転車側が交通ルールを守ること。逆走をせず、信号を守り、標識を守る。この当たり前のことがまず大前提だ。そのためには、自転車に乗る者すべてに教育をしなくてはならない。子供も大人もだ。

フードデリバリーの従事者に自転車の走行ルールを指導する疋田さん(一番右)
画像提供=筆者・警視庁
フードデリバリーの従事者に自転車の走行ルールを指導する疋田さん(一番右)

自転車乗りだけでなくドライバーも教育する

同時に進めるべきものがドライバーの教育だろう。

特に「車道はシェアすべきもの」という当たり前のことを知らしめていただきたいと思う。車道はクルマのためだけにあるものではなく「交通弱者“以外”の者全部」のためにあるのだ。

逆に歩道こそが「交通弱者だけのためのもの」いわばサンクチュアリであって、それ以外のものはすべからくして非歩道に出なくてはならない。法律上もそうだ。「それ以外のもの」とは、古来、馬車であり、大八車であり、リアカーであり、トロリーバスなどであった。現在ならば軽車両(自転車も含む)であり、バスとトラックとクルマだ。

車道はクルマだけのものではないのである。

クルマ側がそのことを知るだけで、日本の道路はずいぶん安全なものになる。

インフラは整備されてしかるべきだろう。計画とロードマップをもって着々と設えていって欲しいと思う。

だが、そんなことより何より、道路を使う人々の意識の問題だ。

自転車はとりあえず左側通行と信号を守れ。スマホをいじるな。

クルマはクルマで危険があるなら減速せよ、横断歩道で停車すべし。自転車レーンに駐車するんじゃない。よくみると、車内で弁当なんか食べていたりする。そんな場合か。

彼らのその怠惰(駐車場見つけるのがかったるい)とケチ(駐車場代払うのやだ)のせいで、今日も車道の自転車乗りが危険な目に遭わされているのだ。

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