「数学はゲーム業界を支える」投稿が話題に

政府や産業界が「数学」に力を入れ始めた。デジタル化が進む中、数学の知識や思考法が、AI(人工知能)、ビッグデータなど、これからのビジネスや生活に不可欠になっているからだ。グーグル、アップルなどの「GAFA」と呼ばれる大手IT企業を生み出した米国では、すでに10年ほど前から人気職業ランキングの上位を「数学者」「データサイエンティスト」などの数学関連が占める。数学ができれば、つぶしが利く時代の到来。日本も対応を迫られている。

今年6月、ゲームメーカー・セガのツイッター投稿が話題を呼んだ。

「サインコサインタンジェント、虚数i…いつ使うんだと思ったあなた。実は数学は、ゲーム業界を根から支える重要な役割を担っているんです」と発信、社内勉強会用の数学資料も無料公開した。

その翌日、「多くの反響をいただき驚いています。数学はこんなふうにゲーム業界で使われてるんだ、という実例が、学生さん他の『数学を学びたい』という意欲につながると嬉しいです」とツイートした。

黒板
写真=iStock.com/nicolas_
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AI、自動運転、暗号通信、画像処理…

7月、経団連と数学研究者が、「数理活用産学連携イニシアティブ」を立ち上げた。財界総本山と数学者。意外な組み合わせに見えるが、数学を活用した新しい形の産学連携を模索するという。10月、NTTが基礎数学の研究組織「基礎数学研究センタ」を新設した。これまでとは抜本的に異なる長期視点とアプローチで社会課題の解決に挑みたいとしている。

数学と言えば、訳のわからない数式や図形が頭に浮かび、「抽象的で難しい」「勉強して一体何の役にたつの?」などと言いたくなる人は多いだろう。だが、AI、ビッグデータ、自動運転、ネット検索、暗号通信、画像処理など、デジタル化のさまざまな機能や仕組みは数学抜きには存在しえない。

「GAFA」と呼ばれる米大手IT企業や米ベンチャー企業が、数学や物理を学んだ優秀な人材を集めているのはそのためだ。

米国の人気職業1位は「データサイエンティスト」

米国では、10年ほど前から数学関連が人気職業になっている。米求人情報サイトのキャリアキャスト・ドットコムの2021年版「ベスト・ジョブ」ランキングでは、ベスト10の1位は、ビッグデータを分析してビジネスなどに活用する「データサイエンティスト」。「統計学者」(3位)、「数学者」(5位)が続き、10位のうちの半分以上を数学関連が占めた。2009年と14年には「数学者」が1位になった。