「私だったらこの国をこうする」

経営書と並ぶもう1つの大きな柱は、主に日本を対象に、社会変革や国家戦略を提言した本である。要するに日本をより良くするために、国家、社会、制度などをどうやって変えていくべきかを論じている。

代表的な著作は『大前研一の新・国富論』(86年)や『平成維新』(89年)で、最新作は11年11月に出版した『訣別』。

実は私の頭の中では経営戦略も国家戦略もあまり変わりない。どちらも40年間のコンサルタント人生で培った分析力や課題設定力、問題解決力で戦略を立案する。

企業のトップに頼まれてその会社を良くするにはどうしたらよいかを考えるのと同じように、国のチーフエグゼクティブに頼まれたつもりで「私だったらこの国をこうする」というアイデアを考えるのだ。

実際にマレーシア、シンガポール、台湾で国家アドバイザーを務めていたこともある。現在でも中国で地域のアドバイザーを3つほど掛け持ちしていて、日本ならずとも国家戦略を提言する仕事を抱えている。

もっとも長く国家アドバイザーを務めたのはマレーシアで、マッキンゼー時代の82年から18年間、マハティール元首相の経済顧問を務めた。

「私が18年首相をしている間に、日本の総理大臣は12人替わった。そんな国で改革なんてできるわけがないから、日本に対する提言は全部マレーシアによこせ」とマハティール首相から言われたのをよく覚えている。

私にとってはマハティールでも誰でも、やってくれる人がいるなら「よし、考えたろか」である。コンサルタントの性分で、「よくしたいから考えてくれ」と頼まれると弱い。対象が会社組織(経営論)であれ、国家(国家戦略論)であれ、あるいは個人(人生論)であれ、同じである。それがそのまま私の著作の3つのジャンルに表れている。

(小川 剛=インタビュー・構成 市来朋久=撮影)