規制を強化しても精神科医の心根は変わらない

その後も、リタリンをはじめとする問題ある向精神薬(商品名:デパス、ベゲタミンなど)自体に規制がかかるようになり(2016年)、多剤大量処方や長期漫然処方などの不適切処方に対しても保険診療上の規制がかかるようになりました。しかし、これらの規制は結局いたちごっこにすぎません。結局、抜け穴があったり、別の手段に取って代わるだけだからです。

考えたら分かることです。いくら規制を強化したところで、患者の命や健康を犠牲にし、隙あらば公金から金をかすめ取ろうと考えているような精神科医の心根が変わるわけではありません。彼らはその規制を逃れるように別の手段を見つけ出すだけなのです。医療現場から排除されない限りそのループは続くのです。現実的には、医師免許を剝奪するのは非常にハードルが高く、どんなに悪徳な精神科医でもそう簡単には排除できない仕組みになっています。

薬で患者を依存させ、無診察あるいは「秒察」で患者の回転を速め、通院精神療法で際限なく荒稼ぎするビジネスモデルは通用しなくなりましたが、賢い精神科医は規制がかかる前から別のビジネスモデルに切り替えていました。精神科デイケア施設を併設し、そこに患者を囲い込むというビジネスモデルです。

精神科デイケア施設への患者の囲い込み

精神科デイケアとは、病気の再発防止、社会復帰、社会参加を目指すリハビリテーションとされていますが、患者の社会復帰など微塵も考えていない、悪質な囲い込み型の精神科デイケアも珍しくありません。プログラムの一環としてビデオ鑑賞、カラオケ、ボードゲーム、テレビゲーム、麻雀などをさせて適当に遊ばせているだけで、何の方針も目的もないような行為が「治療」とされ、さらにはその多くが我々の税金である「自立支援医療費」から消費されています。

10年以上同じ精神科デイケアに通っている患者に、どんなことをしているのか尋ねてみたことがあります。すると「ずっと麻雀してるよ」と驚くべき答えが返って来ました。10年もひたすら麻雀を打ち続け、結局社会復帰などしていないのです。

私はマスコミとともに、質が低い精神科デイケアに違法に患者を囲い込んでいる精神科クリニックの実態を2015年に暴きました。それはパンドラの箱でした。行政機関の闇も同時に暴いてしまったからです。昔から行政機関にとっては、特定の精神医療機関はありがたい存在でした。行政にとって厄介な人や行き場のない人を引き取ってくれるからです。しかし、その持ちつ持たれつの関係が、違法行為や人権侵害を見過ごすことになり、宇都宮病院事件(1983年)や大和川病院事件(1993年)につながったのです。行政が貧困ビジネスと手を組んで人権侵害を助長するという構図が21世紀に引き継がれていました。