顧客の「"不"の感情」を洞察せよ

それは、「顧客の“不”」を考えることです。こうした顧客の潜在的な欲求を探る思考を「顧客インサイト」と呼びます。インサイトとは洞察すること。つまり、顧客インサイトとは、顧客の立場から顧客が感じていることを深く洞察することです。

顧客の“不”とは、不のつく感情を意味します。

○不便
○不安
○不信
○不適
○不要
○不満
○不快
……

他にもありますが、顧客が感じる不の感情をキャッチすることが、より深く顧客を知ることになります。

ニーズとサービスが飽和気味な市場においては、ほとんどのニーズは既存の商品やサービスで満たされています。しかしながら、どんなに商品やサービスが充実しても、新たな不満が生じるものです。顧客インサイトを通じて、そこを素早く、正確にキャッチすることができると、競合との差別化につなげやすくなります。

ソファに座っている女性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

「結果にコミットする」という言葉が顧客の“不安”を解消した

話を戻して、RIZAP社がターゲットとする、先にあげた顧客は、どのような不の感情を持っているでしょうか。

○不便:時間や場所の融通が利かないと不便
○不安:本当にダイエットに成功できるか不安。長続きするか不安
○不信:本当に成果が出るのか不信
○不適:本気で痩せようと思っている自分にとって既存サービスは不適
○不要:痩せるうえで効率の悪い機材や施設は不要
○不満:もっと自分にあったアドバイスが欲しいけれど、もらえないことが不満
○不快:人に見られながら運動をするのが心理的に不快

あくまで憶測で並べてみましたが、このような不の感情があげられるのではないでしょうか。

RIZAP社は、顧客が抱える不の部分を解消するサービスを考案し、提供することで、顧客の支持を得ることに成功しました。

特に、ダイエットに臨む人が抱える「不安:本当にダイエットに成功できるか不安」という部分に対して、「結果にコミットする」という言葉と成果保証のサービスで安心感を与えたことが、支持につながったのでしょう。

過去にダイエットに失敗した経験があり、不を感じている顧客を、クラスターとして顕在化させ、既存の競合のサービスでは満たされていなかったところを解消するサービスを提供することが、RIZAP社の戦略的なシナリオだといえると思います。