まずは、社長や役員の行動について。

「内紛がある」「公職など、経営とは関係のない肩書が多すぎる」「極端に労働組合を嫌っている」「意思決定が遅い」「有能な幹部が退職している」……。

さすがに直接確かめるのは難しいが、新聞・雑誌の報道である程度はフォローすることができる。

大型倒産となった穴吹では、倒産間際に役員間の内紛が表面化。これは逐一、週刊誌や新聞で報道された。

もう少し身近なのが、次のような従業員の変化である。

「従業員の退社が目立っている」「社長や幹部に対する悪口が増えている」「所在なげにしている従業員がいる」「接客や電話応答に身が入らない」……。

これなら営業マンに接するときや営業所に電話をかけるような折に、思い当たることがあるかもしれない。

「どの建設会社がそのマンションをつくるのか」も大事なポイントだ。穴吹は例外的に自社で建設も行っていたが、多くのデベロッパーは企画と販売を手がけるだけ。つまり建設会社はデベロッパーから工事を請け負い、支払いを受ける立場にある。裏を返せば、施工主(デベロッパー)の信用力をきちんと吟味しているということだ。

したがって、施工にあたるのがスーパーゼネコンなどの優良な建設会社であれば、当然ながらそのデベロッパーは高い信用を得ているということになる。

反対に銀行団の債務免除を受け、ようやく生き残っているような建設会社が手がけているケースでは、デベロッパーの信用力も劣ると見るべきだ。

一方、「財務面の兆候」はどのようにとらえるべきか。

「まずはメーンバンクがしっかりと資金調達を支えているかということです。穴吹の場合はたくさんの銀行と取引していましたが、逆にいうとはっきりしたメーンバンクが見当たらないため、支援体制を組みにくかった」(篠塚氏)

資金繰りの厳しさを見るには、次のような指標もある。

「社債の償還が延期されていないかということです。これは会社が発表しますから、ホームページなどでチェックできます。また、前年に比べて売り上げが落ちたのに、棚卸資産(在庫)が積み上がったままだというケースがあります。要は『売れていない』ということなので、倒産するリスクは大きいですね」(同)

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影)