こうしたIOCの動きは、北京五輪への選手派遣を懸念する国々への必死のアピールなのだろうが、かえってその疑義が深まるばかりといったところか。実際に、米国は12月6日、ついに北京冬季五輪への外交的ボイコットを決めた。オーストラリア、英国、カナダも相次いで表明しており、彭帥さん問題が五輪に飛び火しないよう根回しをしていたバッハ会長の努力も奏功しなかったようだ。
テニス界の騒動が五輪を巻き込んだ問題に
WTAのように、今後中国から離反するスポーツ団体は出てくるのだろうか。男子テニス協会(ATP)のように中国側の対応に懸念を表明している組織はあるものの、テニス界以外に追随の動きはまだ出ていない。
しかし、北京冬季五輪への「外交的ボイコット」については9日時点で4カ国に上っており、今後おそらく複数の同盟国も同調することになるだろう。サイモンCEOの断固たる態度が米国の決定に追い風になった、とする向きもある。
WTAの2022年日程は現時点で発表されていないが、オーストラリアのスポーツメディア「フォックススポーツ」は、「中国は厳しいコロナ対策を行っており、五輪を除く主要な国際スポーツ大会の開催はいずれにしてもなさそうだ」と、大会ができないのは“あくまでコロナのため”と伝えている。となると、コロナ禍が落ち着く頃、世界のスポーツ界は中国に対しどのようなリアクションをとるのか、引き続き注視する必要がありそうだ。
「チャイナマネーをもらわない」という犠牲を払いながらも、中国からの脱却を明確にしたWTA。形はやや違うが、欧米諸国が中国の政策に対しノーを突きつける格好にもなった。中国での五輪開催が目前に迫る中、WTAの判断を「単なる一競技団体の決断」と見るのは軽率すぎる。各国は「政治とスポーツ」とのバランスをどう取るか、難しい舵取りを迫られている。