介護に対する知識と教養を持っていない人が、この文面を見れば、「ひどい介護職員」だと考えるはずです。しかし、私はこう考えます。このホームは自立支援が売りのホームです。特に、このホームの自立支援は、残存機能を維持していくことに力を入れています。本人が、あきらめない限り、このホームでは残存機能をフルに使うことを「良」としています。したがって、手伝うことはしません。手伝うケースは、本人がギブアップした時だけです。
もし、こういう情報や知識が事前に知っていたら、この口コミの評価はどう変わるでしょうか? 何度もチラチラ見ていたということは、気にかけて様子を伺っていたとのでしょう。つまり、私のような専門家からすればそのホームは、ひどいホームとかひどい介護職員という評価にはなりません。むしろ、自立支援に真剣に取り組んでいるホームということになります。口コミを信じてしまうと、本当の姿が見えなくなることが多いのです。
体験入居やショートステイはいつもと違う営業モード
体験入居も、あてにはなりません。老人ホームでは「まずは体験入居をしてみてはどうでしょうか?」という提案をしています。その提案に対し、多くの入居相談者は「なるほど」と共感し、体験入居に進みます。そして「このホームでいいんじゃない」という結論に至り、入居を決めてしまいます。
また、体験入居とほぼ同じ意味合いで「ショートステイ」というものがあります。ショートステイとは、数日から1週間程度を目安に、当該ホームにステイすること。体験入居と違うところは、料金体系です。
体験入居やショートステイは、ホーム側からすれば営業目的です。不快な思いをさせないよう、気を使います。実は、多くの職員には歓迎されていないのです。この制度や仕組みを前向きには受け止めていません。理由は手間がかるからです。職員は、可能な限り業務を平準化している為、いつもと違うことに対する違和感は、かなりのストレスになります。
さらに、体験入居者、ショートステイ入居者に対する支援で労働比重が重くなるため、本入居で何カ月間も住んでいる入居者に対する支援が手薄になってしまいます。体験入居の時はすぐきてくれたのに、本入居になったとたん、ナースコールを鳴らしても、忙しければ「待たされる」という現象が起きます。
だから、体験入居などでホームの介護実態を知ることは、無意味なことだと私は考えています。