貸した側は「友達」と「お金」の2つを失う

先にも書いたように、私はこれまで、その教訓をイヤというほど味わってきました。だから「知り合いとは一切お金の貸し借りをしない」と心に決めています。それは私自身の人生における“掟”のようなものと言っていいでしょう。

親しいからこそ困っていたら手を貸してあげたい。友人だから助けてあげたい。その気持ちは痛いほどわかります。そのやさしさゆえに、多くの人は親しい友人からの「お金を貸して」を無下に断われず苦悩するのですから。

でも考えてみてください。友人にお金を貸したけど、返ってこない——こうした状況になったとき、借りた側は「友だち」を失うだけですが、貸した側は「友だち」と「貸したお金」の2つを同時に失うことになります。「助けてあげたい」という善意から貸したにもかかわらず、借りた側よりも多くのものを失ってしまうんですね。こんなのおかしいと思いませんか。

だから、やはり、きっぱりと断わるべきだと私は思います。親しいからこそ断わる。ずっといい関係でいたいから断わる。そう決めて断わって、「友だちなんだから貸してくれるだろ。断わるなんて友人じゃない」などと言われるようなら、その人は本当の友だちではないと思えばいい。そう考えるようにしています。

知り合いから「お金を貸して」と頼まれたらどう答えるべきか

では、知り合いや友人から「お金を貸して」と頼まれたときに、極力、人間関係にヒビを入れずに断わるためにはどうするのが得策なのでしょうか。まず大切なのは、「お金は貸せない」という結論を先に伝えること。のらりくらりとあいまいなことを言ってはぐらかそうとするのはよくありません。

ごめんなさい。貸せません。

とストレートに答えればいいでしょう。「友だちや知り合いにはお金を貸さないことにしている。友だちでいたいから貸し借りはできない」と、自分の心情を素直に伝えるのもいいと思います。

両手のひらを相手に向けている人
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです

それでも人によっては「全額でなくていい。半分だけでも——」などと切り返されるケースもあります。そのときは、「自分もお金がない」という状況を訴えること。これもスタンダードですが、それゆえに効果もあります。

ごめんなさい。無理です。

ウチも本当に苦しくて、私のほうが貸してほしいくらいなんだ。

こういう仕事をしているせいか、私もときには「銀座でお店を経営しているほどだから、そのくらい都合つくでしょ?」などと言われることがあります。そんなときはやはり、「とんでもない。華やかに見えるけど、この不景気で本当に大変なんです。日々の資金繰りにも汲々きゅうきゅうとしていて、私が借りたいくらいです」と、すべてこれで押し切ってお断わりしています。

「貸せない。なぜなら、こっちだって人に貸すほど余裕がない」というパターンが王道であり、それが最善の断わり方と言えるでしょう。たとえお金に余裕があったとしても、そう言うべき。