「最重要、最優先課題である」と繰り返してきた安倍首相

次に6月7日付の産経新聞の社説(主張)を読んでみよう。他紙とは違い、大きな1本社説である。

その産経社説は「改めて、拉致誘拐という北朝鮮の国家犯罪に怒りを新たにする。北朝鮮は拉致を認めて謝罪した後も再調査の約束すら反故にしたままだ」と強調した後、安倍首相に要望する。

「怒りを国民全ての思いとして結集し、これをぶつけるべき相手は北朝鮮であり、独裁者である金正恩朝鮮労働党委員長である」
「そして国民の怒りを突きつけ、被害者全員の奪還を実現させるのは、日本政府の責務である」
「とりわけ安倍首相は拉致問題の解決を政権の『最重要、最優先課題である』と繰り返してきた。なんとしても自身の手で、めぐみさんらの救出を果たしてほしい」

拉致問題の解決は安倍首相の手腕にかかっている。問題はそれを安倍首相自身がどこまで自覚しているかだ。安倍首相はどんなに忙しくとも、産経新聞の社説だけは読むと聞いたことがある。今回の産経社説の「自身の手で、救出を果たしてほしい」との呼びかけに即時に応えてほしい。

安倍首相には日朝間の膠着を打開する義務と責任がある

産経社説は「拉致問題は膠着こうちゃく状態に陥っている」とも指摘し、こう書く。

「5月19日の閣議で報告された『外交青書』は拉致の解決を『最重要課題』と位置づけ、安倍首相が昨年5月に『条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と会い、率直に話をしたい』と表明したことを盛り込んだ。だがその表明からも、すでに1年を過ぎている」

繰り返すが、結局、安倍首相は金正恩氏に馬鹿にされているのである。しかも米朝首脳会談は2度の開催でストップし、北朝鮮は今年に入って短距離弾道弾ミサイルを何度も発射してアメリカをはじめとする国際社会を挑発している。国際社会が経済制裁を緩和しなければ、核・ミサイルの開発を続行するという挑戦状である。

産経社説は訴える。

「安倍首相は滋さんの死去に『痛恨の極み』と言葉を詰まらせ『チャンスをとらえて果断に行動し、(拉致被害者の帰国を)実現したい』と強調した。だが、待っていてもチャンスはやってこない。政府は自ら膠着を破る行動を起こすべきだ。拉致の解決なしに北朝鮮は未来を描けないと理解させる、交渉の原点に返るべきだ」

大賛成だ。安倍首相には膠着状態を打開する義務と責任がある。「拉致の解決なしに北朝鮮は未来を描けないと理解させる」には何が必要か。やはり、トランプ氏に頼らず、既存の日朝平壌宣言とストックホルム合意をうまく使うのがベストだろう。

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