加えて、今回の規制では信託保全が義務化される。信託保全とは、FX会社が顧客から預かった証拠金を信託銀行勘定に移すことで、仮にFX会社が破綻しても、顧客の証拠金が保全されるという仕組みだ。顧客の資産保全という点で望ましいことだが、FX会社はそのシステム対応に必要な設備投資を行わなければならない。そのうえ、預かり証拠金の残高が増えるほど、FX会社が信託銀行に支払う手数料がかさむ。つまりFX会社にとっては、支出が増える一方、収入は減ってしまう。もはや儲かるビジネスではないと判断すれば、廃業するところも出てくるだろう。
取引しているFX会社が廃業になれば、現在、持っている取引は、すべて強制的に清算しなければならない。このとき含み損が生じていたら、それは実現損へと変わる。今はまだなんともいえないが、関係者に聞いたところでは、「現在110社あまりのFX会社の数は半分以下になる」という厳しい見方もあるくらいだ。
規制が行われた瞬間に、取引している業者に廃業されたら、相場に関係なく取引の清算に追い込まれる。さらに、FX会社のなかには「どうせ廃業になるのだから」と顧客の注文を大量に仕掛け、一時的に荒稼ぎするところも出てくるだろう。
基本的にFX会社は、顧客から受けた注文を反対売買(買いポジションを売り、売りポジションを買って決済すること)し、自社で為替リスクをとらないシステムをとっている。が、荒稼ぎを目的にして反対売買をしなければ、顧客の損はFX会社の利益になるが、逆の場合には大きな経営リスクを抱えることになる。破綻するところも出てこよう。
トラブルに巻き込まれないためにも、廃業に追い込まれそうな小さな業者との取引は早々に手仕舞いしたほうがよいだろう。これから始める人は、大手FX会社やネット証券会社など、信用力の高い業者だけと付き合うのが肝心だ。