“ホリエモンロケット”はまだまだ道半ば

マスク氏は、技術者たちを問い詰め、「念のため」とか「これまであったから」というようなものは、そぎ落とす。徹底した合理化からシンプルなロケットを生み出す。日本もこうした発想は大いに参考になる。

3つ目は、「国への依存体質」からの脱却だ。スペースXも、NASAの資金を得てロケットや宇宙船の開発を進めたが、日本と違うのは、そこから独自のビジネスへとつなげていったことだ。一方、長年官需に依存し、国が保護しなければ国際競争に耐えられない「幼稚産業」と呼ばれてきた歴史がある日本の宇宙産業界は、なかなかそれができない。

4つ目は「コミュニケーション能力」だ。マスク氏はツイッター発信で物議をかもすことも多いが、説明や働きかけに熱心だ。いわば顔の見える会社と経営者。日本では、実業家の堀江貴文氏が出資してロケットを開発する宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」が、その点で有名だ。堀江氏や代表の稲川貴大氏がメディアにしばしば登場し、トップの顔や目指すものをアピールしている。

会社のホームページには「ロケット業界のスーパーカブ」と、ホンダのオートバイの名前を引用して、自社のロケットが目指すものを示している。資金不足を補うために、クラウドファンディングも実施した。ただ、衛星打ち上げ用ロケットを開発するまでまだ時間を要する。

一方、長年携わってきた大企業は、突出して目立つことを避ける傾向が強い。企業の伝統なのか、監督官庁や注文主の宇宙機関に首根っこを押さえられてきたためか、目立たぬことを良しとする。今の時代にふさわしくない。

担い手は多いのに前に出る経営者がいない

戦後間もない日本には、本田宗一郎氏が起業した「ホンダ」や、盛田昭夫氏と井深大氏の「ソニー」のようなベンチャー企業があった。今ではどちらも大企業になったが、最近、トヨタやホンダなどの異業種が宇宙開発に参入し始めた。

ホンダは再使用型の小型ロケットで、小型衛星打ち上げを目指す。同社は、本田宗一郎氏の夢だった航空機へ進出し、小型ジェット機「ホンダジェット」を独自で開発、ビジネスへつなげた実績がある。ニ足歩行ロボット「アシモ」の開発でも、政府より先行して取り組んだ。技術者たちが動物園の動物や子どもの歩く姿を観察し、ニ足歩行の仕組みを分析する「基礎研究」を長年続け、結実させた。日本でも国依存から脱却するきっかけになるか、注目される。

国内には「インターステラテクノロジズ」だけでなく、ロケットや衛星ベンチャーが多数誕生している。こうした宇宙ベンチャー、異業種からの参入組、伝統ある製造業の宇宙開発部門。担い手は多い。自らビジョンを抱き、自らの言葉で語り、実践する経営陣や技術者がどれだけいるか。そこにかかっている。

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