アメリカ政府が国内の化石燃料生産を抑え続けるなら、1970年代のようにOPECが価格と供給を支配することになる。これでは気候や環境面の利点がほとんどなく、地政学上の問題が増加するだけだ。
バイデン政権はまた、国内のエネルギー供給の安定を確保できるはずだった複数のパイプライン敷設計画を中止させた。
このことは天然ガスの価格に重大な影響を及ぼす。LNGに対する需要は世界中で増えているから、米国産天然ガスも多くは輸出に振り向けられる。そうなれば、国内のエネルギー価格は高騰する。
欧州の危機を反面教師にせよ
またアメリカは連邦レベルでも州レベルでも、運輸産業などにおけるエネルギー消費の「電化」を推進している。国内最大のエネルギー消費地であるカリフォルニア州やニューヨーク州、テキサス州は今でも電力の構造的な不足を抱えているのに、政府が電力消費の増加を促している。しかも電力需要の増加に対応できる送配電網は整備されていない。
今こそ世界各国はヨーロッパのエネルギー政策の失敗をつぶさに検証し、現在のエネルギー危機を、同じ過ちを犯さないための警鐘と捉えるべきだ。電力の生産・供給・販売は民間企業でもできる。しかし電力不足で大規模停電が起きた場合、国民は政府の責任を問う。手頃な価格でエネルギーを安定供給できないような国に、未来はない。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら