治療と仕事の両立に困難を感じる人が7割
もう1つは、仕事を持つ人にとって治療と仕事との両立が難しいという問題だ。人事院の前出調査によると、不妊治療経験者や不妊治療を検討している人のうち、不妊治療と仕事を両立することについて「両立することはできると思うが、かなり難しいと思う」と回答した人が62.5%、「両立することは無理だと思う」が11.3%と、多くの人が困難を感じている。
仕事との両立が難しい・無理な原因として最も多かったのは「通院回数が多い」(46.1%)、次いで「経済面の負担が大きい」(44.6%)、「告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しい」(41.0%)、「職場が忙しかったり、仕事を代替できる者がいないため、職場を抜けづらい」(35.6%)の順となっている。また、不妊治療と仕事を両立する場合、希望する治療スタイルとして「勤務時間中でも、必要なときに通院し、治療を受けたい」と答えた人が最も多かった。
少子化対策として公務員が率先してやる
治療と仕事の両立を支援するために民間企業でも独自の不妊治療休暇を設ける企業が徐々に増えている。また、政府も不妊治療のために利用可能な休暇制度などを利用させた中小企業事業主を支援する助成金制度も実施している。さらに今年4月には次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画策定指針」に盛り込むことが望ましい事項として、不妊治療の休暇制度など「不妊治療に配慮した措置の実施」が入った。
それでも民間企業に先駆けて公務員に不妊治療休暇を制度化するのか。人事院の担当者はこう語る。
「昨年5月に閣議決定された『少子化社会対策大綱』で、不妊治療と仕事の両立のための職場環境整備を推進することが掲げられた。治療の段階が進むと、体への負担も重くなり、それなりの通院日数も必要になる。アンケートでも仕事との両立が難しい原因として通院回数が多いという結果も出ている。少子化対策という社会的な要請も踏まえて不妊治療の休暇を新設した」
少子化対策にどれだけの効果があるのかわからないが、上限10日の休暇は短いようにも感じる。国家公務員の労働組合の幹部も「地方自治体では先行して不妊治療休暇を設けているところもあり、我々としても不妊治療休暇の新設を求めてきた経緯がある。少子化社会対策として公務員が率先してやることは極めて高く評価できる。今後は原則5日プラス5日の10日は短すぎるという指摘もあり、本当に満足できるものなのか、検証しながら環境を整えていく必要がある」と語る。