フランスの某新聞の特派員として「東北地方」を訪れたE・トッド氏は広大な復興前の状況を目の当たりにした。(AFLO=写真)

フランスの某新聞の特派員として「東北地方」を訪れたE・トッド氏は広大な復興前の状況を目の当たりにした。(AFLO=写真)
 ――原発についてどう思いますか。

地震大国である日本にとって、今の原発システムが危険なのは明らかです。日本の技術力をもってすれば、再生可能エネルギーの推進、地震や津波に耐えうる新型の原子炉の開発だって可能でしょう。

原発大国フランスや脱原発を決めたドイツと同じ思考の枠組みで、日本のエネルギー政策を議論するのはナンセンスです。地震国でもないドイツの脱原発宣言は、何の根拠もない過剰反応でしょう。

――数年前、トッドさんは、「日本は軍事用原子力である核武装について検討したほうがよいのではないか」と発言され、日本の世論は心底驚きました。

戦後、日本を守ってくれていたアメリカは衰退期に入っています。一方で、中国はあらゆる面で暴走寸前。よって、日本を取り巻く国際的な環境は、今後ますます不安定になる恐れがあります。だからこそ、日本は核武装について真剣に考えてみる必要があると思います。今回の原発事故ではっきりしたことは、「民生用原子力」(原発などで利用される原子力技術)は、「軍事用原子力」よりも危険だということです。

――核兵器よりも原発のほうが危険だということですか。

そのとおりです。まったくもって逆説的ですが、「フクシマ」における現状、そして中国のしつこい嫌がらせを見れば、それは自明です。核の保有が地政学的なパワーバランスを保ってきた事実から考えれば、この結論は、それほど驚くことではないと思います。

(大沢尚芳=撮影 AFLO=写真)