製造プロセスを含めた提案力やバリューチェーンに強み

ABFはただ素材として供給されるのではない。味の素ファインテクノ社は、半導体パッケージメーカーや半導体メーカーと密にコミュニケーションをとっており、顧客の製造プロセスを含めた提案、細やかな技術サポートを行っている。さらに、原材料メーカーから、基板製造プロセスに関わる薬液メーカー、装置メーカーといった、直接の顧客以外のバリューチェーンすべての会社と連携しており、競合他社にとっては参入障壁となっている。

半導体パッケージの鍵としてデファクトスタンダードとなったABFだが、今後予想されるパッケージ基板のトレンド、微細配線化、大型化、高多層化、高速開発サイクルにも対応していく。そのために、最新の機器設備や実験スペース、顧客とのコラボレーション促進を目的とした新R&D(研究開発)棟の建設も計画している(2022年6月に完成予定)。

5G到来に伴うサーバー・通信ネットワークや車載用途、人工知能(AI)の普及により、今後も世界の半導体市場は拡大を続け、今後10年で2倍以上成長するとの予測もある。ABFも多用途展開により、2024年の出荷量を2019年比で2倍以上になると見込んでいる。

ちなみに冒頭で紹介した噂、「味の素社(ABF)がゲーム機生産のボトルネックになっている」だが、同社は「顧客需要には応えられている」と明確に否定する。

ABFは直接コンシューマーの目に触れることのない部材だが、料理に使われる調味料のように欠かせない存在になっている。アミノ酸における研究開発を、食品分野にこだわることなく、大きなトレンドになりつつあった半導体領域に挑戦したからこその成果である。

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