話を聞いてもらい、共感してもらうことで、自分の気持ちが整理でき、「何となく嫌」から「ここが困っている」に変わると解決の糸口も見えてきます。夫の話にも聞く耳を持つようになります。仕事が多忙なら、その状況を丁寧に説明し、自分には何ができるのか提案しましょう。これは譲り合いの精神です。妻が介護に協力する気持ちになったら次は「起立」、つまり夫も一緒に立ち上がって行動することです。休日は積極的に介護を手伝い、一緒に寄り添っていることを言葉や行動で示します。
そして最後に「礼」。妻への感謝です。いきなり「ありがとう」と言いにくいときは、「おお」とか「いやー」といった間投詞を付けると言いやすくなります。
くれぐれも丸投げはいけません。介護休暇を取って協力するのが無理でも、介護保険は使いようです。その手配も自分でやれば、妻の負担も減り、介護状況を把握できます。自分と妻と介護サービス専門業者というコマを上手に組み合わせて計画を立て、全体を円滑に回すリーダーシップが夫に求められているのです。
そこではコーディネーション、コミュニケーション、コラボレーションの3Cがポイントです。3Cも「脱帽・起立・礼」も、ビジネススキルそのもの。仕事ができる男性ならきっと介護もできるはずです。職場では短時間で効率よく組織を回すのはお手の物でしょう。そのスキルとリーダーシップを介護にも発揮する。そんな夫の当事者意識があって初めて妻の協力が得られます。何よりも介護は自分の親への最後の恩返し。実の親を介護できるのは、豊かで幸せなことなのです。
(構成=斉藤栄一郎)