夫婦関係の修復は「脱帽・起立・礼」から

仮に妻に無理矢理押しつけることができたとしても、介護が終わったときに大変な事態が待っているはず。だから説得は、お勧めしません。

長い夫婦の歴史の中で、子育てや家事、PTA、地域活動を任され理不尽な思いをしてきた妻は多いはずです。その揚げ句に「当然だ」の一言で親の介護を押しつけられ、休日もなく24時間つきっきりの介護で、夫は愚痴も聞いてくれない。やがて親が逝き、「次は夫の介護なの?」と思った瞬間、堪忍袋の緒が切れて“介護離婚”を切り出すことになります。

特に文句ひとつ言わずに黙々とこなしてきた妻ほど、介護終了と同時に爆発する恐れがあります。しかも今は仕事を持つ女性が増え、兄弟姉妹が少なく自分の親の面倒をみる状況が増えている。こういう背景を無視して親の介護を求めても、簡単には応じてくれません。しかし、このときこそ夫婦にとって将来の最悪の事態を回避する絶好のチャンス。今までのあり方を見直し、とことん話し合うことで夫婦関係の棚卸しをするのです。

夫婦関係の立て直しの基本は「脱帽・起立・礼」。まず「脱帽」とは、介護は妻の役目という思い込みのヘルメットを捨て去ることです。そもそも自分の親の面倒は自分でみるのが基本なのに、仕事の都合で妻に協力を仰ぐのだと頭を切り替えます。そのうえで嫌がる理由を真摯に聞く。妻の親が病気だとか、義母と関係が悪いとか、地域活動やパートを犠牲にしたくないとか、いろいろ不満があるはずです。そこで「所詮おまえはパート。俺の仕事のほうが大事」などと頭ごなしの発言はいけません。

人間は、不満であふれそうな心のコップが空にならないと人の話は聞けません。妻の言い分をまずはじっくり聞き、コップを空にするのです。コツはオウム返しでひたすら聞き役になること。妻が「お義母さんといい思い出がなくて辛い」と言ったら、「そうだね、辛いよね」とオウム返しで肯定します。「でも、おまえも世話になったろ」などと反撃や追及をしたら、妻は心を閉ざすでしょう。