「浪費の国」アメリカの価値観がシフトしているという。リーマン・ショックを境に、消費者は「より安く、より多く」を追求することをやめ、「よりやさしく、よりよく」を商品にも企業にも求めるようになった。この一大変化を数字と事例で分析した『スペンド・シフト』は、日本における若者の消費動向や、震災後の日本におけるにも驚くほどあてはまる。このほど来日した著者のジョン・ガーズマ氏が、ソーシャルメディアを通じた社会変革に詳しい若手ブロガー、イケダハヤト氏と、消費の未来について語りあった。

【イケダハヤト】本を読ませていただき、不況によって消費者のマインドに変化が起き、様々なプレーヤーが「よりよい世界」を創るために奮闘している姿に感動しました。最後の章に書かれていた「何もかもうまくいく」というメッセージはいま僕が感じていることと近いと思いました。

【ガーズマ】あのメッセージは、私たちがこの本のためにデトロイトで取材していたときに見つけたものです。街なかにある空きビルのウィンドーに、地元のアーティストがインスタレーションを行なっていて、そこに書かれていた言葉です。デトロイトというアメリカでリーマン危機によるもっとも経済的な打撃を受けた都市で、このような楽観主義が見られたことに驚きました。デトロイトの住宅価格は暴落していて、現在平均14000ドル(日本円で約1200万円)です。私たちの会ったアーティストは、家賃200ドルで暮らしていました。芸術家も起業家も、コストが低く、大きな機会があるところに集まります。多くの人が職を失ってデトロイトを出ていきましたが、新しい住人たちが流入してきているのです。彼らがレストランを開いたり、事業を始めたりしています。再生可能エネルギー会社をつくって、直流による電力供給で電力の地産地消を実現しようとしている人たちにも会いました。

【イケダハヤト】アメリカではリーマン・ショックを境に人々の行動が顕著に変わってきたと書かれていましたが、日本でも震災を経験して同じようなシフトがきているように感じています。日本はG7のなかでいちばん寄付額が低いのですが、でも今回の震災後には、81.2%の人が寄付を行いました。震災を機に多くの人が支え合い、社会のためにお金を使うようになったのだと思います。