コンビニは「時間を買う店」だといわれてきました。最も伸張したのは、日本経済がバブルに向かっていく時期。つまり日本人の多くが超多忙だった時代です。時間を省ける便利さで評価を集めたコンビニは、その後も、画一的で効率的な経営に力を入れ続けてきました。現在でも競合企業の多くは、これまでの方向性を維持しようと考えているようです。しかし効率を考えるだけでは挑戦は生まれません。どこかで行き詰まってしまう。
幸い、ローソンには新しいものに積極的に取り組む企業文化があります。唐揚げなどフライヤーを使った「店内調理」や、チケットの手配ができる「情報端末」を最初に始めたコンビニです。新規事業への挑戦にはリスクが伴いますが、自分たちの論理にしがみついているだけでは、社会の大きな流れから取り残されてしまいます。
私がこの業界にきたとき、数字の上では「顧客の平均滞在時間は約3分間」と把握していました。ところが自分の目で店を見てみると、必ずしも3分以内で帰ってしまうお客さんばかりではない。なかには長い時間滞留されるお客さんもいる。そうした方々には、従来のコンビニとは違うアプローチが有効ではないか。ひとつは店内放送です。全国のローソンには1日約900万人の来店があります。子会社のローソンエンターメディアでは、レコード会社と協業して、店内放送で新曲を宣伝するという事業を進めています。
また、コンビニの中心顧客は、長らく働き盛りの男性でした。忙しい彼らのために、すぐ食べられる高カロリーな商品が中心になってきた。しかし高齢化を背景に、「忙しくない人」が増えつつあります。またどの年代でも独り暮らしが増え、「個食化」が進んでいる。01年から始めた「ナチュラルローソン」では、都市部の女性に向け、美と健康にこだわった商品を多く展開しています。また05年から小分け野菜などを置いた生鮮コンビニ「ローソンストア100」も始めました。
いずれも「全国一律」という従来の経営手法からすれば異端です。しかし、立ち止まるぐらいならば、仮説をもとにどんどん挑戦したほうがいい。時間の使い方でも同じだと思いますが、効率について考え込むぐらいなら、感覚的なアイデアに基づいて走り出すべきです。