先代の料飲店向けルート配送がウケた

実は現在も一般家庭向け配達1件当たりの平均単価は4500円であり、一般家庭向け配達単体で厳しい。では、どこでカバーしているのか。配達ではなく店舗での売り上げかと思いきや、意外な答えが返ってきた。

「実は料飲店などの業務用にも、『ビール1本から、エリア内ならどこでも1時間以内に無料』で届けるサービスを03年から始めました。ビール1本からといっても料飲店が実際にビール1本だけ注文することはなく、単価は約10万円(1店当たりの1カ月平均金額)と非常に高い。一般向けの採算性の低さを十分にカバーできます」

先代の時代は、料飲店向けにお酒をルート配送していた。BtoC再開後もその事業は続けており、社内にBtoBの営業部隊がいた。その営業部隊が「注文し忘れたら使ってください」と料飲店にアプローチ。料飲店は天候などを確認できるので、もとより前日より当日注文のほうがいい。東京の料飲店のあいだにカクヤスの評判が広がるのはあっという間だった。

カクヤス・佐藤順一社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
カクヤス・佐藤順一社長

「業務用宅配を始めて、それまで10年以上かけてつくってきた一般家庭向け宅配の売り上げを2年半で追い抜いてしまいました。06年には店舗全体で黒字化しています」

家庭用と業務用の組み合わせでコストを平準化

業務用と組み合わせた効果は、単に全体の単価を押し上げただけではない。見逃せないのは物流コストの平準化だ。一般家庭用の注文が殺到するのは主に週末だ。そのピークに合わせて配達員を雇うと、注文の少ない平日はムダが多くなってしまう。しかし、業務用も手掛ければ月~金も人員が稼働して、収益性が増していく。

実は店舗間でも平準化をしている。「業務用のビールは樽や瓶。在庫になるとスペースを取るので、業務用が増えすぎると店が壊れます。増えすぎたところは注文を隣の店舗などに移すなど工夫をしています」。配達能力に余裕のある店舗に注文を付け替えれば、稼働率が高まる。店舗はきれいに保たれるうえにコストが平準化されて一石二鳥だ。